
課題解決の秘訣は、「寄り添い」と「積み重ね」事業課題を解決するために、デザイナーとしてできること
こんにちは、プロダクトデザイナー7年目の熊谷慶人です。現在、OB/OG訪問ネットワーク「ビズリーチ・キャンパス」というサービスを担当しています。 ひとことにプロダクトデザイナーと言っても活躍の場は様々だと思います。私は事 […]
こんにちは、UIデザイナーの渡部です。
現在は株式会社ビズヒントでデザイナー業務に加え、デザイナーの採用活動にも関わっています。
採用活動の中で、「デザイナーとして事業に貢献したいが、現職で思うように動けない」 と悩んでいらっしゃる方に何度かお会いしました。
詳細にお話を伺っていくと、「ビジネスや事業理解の重要性はわかっていて、書籍などから一般的なビジネスの知識は学んでいる。一方で、担当している事業の理解をどう深めればいいかわからない」という悩みが共通していました。
私も、ビジネスモデルや市場から見たポジション、自分と全く立場が異なるユーザーの思考など、事業の置かれた状況を理解するまでにかなり苦労しました。
今回の記事では、私が新規事業を3年経験して見えてきた、事業やドメイン理解を深めるためのインプットのプロセスや実践ポイントを紹介します。現在の事業への理解が足りず、思うような成果を出せずに悩んでいる方の参考になれば幸いです。
BizHintは、日本最大級の決裁者向けBtoBマッチング支援プラットフォームとして、経営者・企業の経営者層の方と、SaaSベンダー様とのマッチングを創出しています。
ユーザーにあたる中堅/中小企業の経営層の方々に、BizHintサイトへの登録やメールマガジンを購読いただき経営のヒントを無料でお送りする一方で、SaaSベンダー様からはサイトやメールマガジンに掲載する広告掲載料をいただくビジネスモデルです。
BizHintにジョインした当時は、UIデザインの「見た目」の改善ばかりにフォーカスしており、「点」でしかデザインを考えられずにいたため、成果を出すことができなかったように思います。
事業のドメインや構造を理解したことで、事業からデザインを一貫した「線」で捉えられるようになりました。どこを改善すれば事業にインパクトを与えられるか仮説を立てられるようになり「事業指標の〇〇を伸ばすためにこのUIを〇〇のように改善しませんか」と提案し、実行できるようになりました。
BizHintでは、会員様向けメールマガジンからのコンバージョンを重要指標の1つにしています。
当時、メールマガジン登録フォームの改善に取り組んでいたのですが、事業理解を通じて「配信停止率」にフォーカスした改善を行うことにしました。登録率よりも、継続率を改善することのほうが長期的にコンバージョンへのインパクトが大きいと考えたためです。
そこから、登録フォームのUXライティングやUI改善を提案・実行し、改善前に比べ配信停止率を半減することができました。
私の経験から事業を理解してデザインする上で、重要な情報をまとめると下記の3つになると考えています。
この中で当時の私に欠けていたのは、BizHintのドメイン知識と事業構造でした。
これらの理解を深めるために、私なりに実践した方法をご紹介できればと思います。
まずは意識の改革から……ということで、デザイナーであることを一度横に置き、事業を創るいちメンバーであると意識を変えました。
それまではビジュアルデザインやユーザー体験といった、いわゆるデザイナーの担当範囲でしか物事を考えられていませんでしたが、意識を変えるだけで聞き流していた他メンバーの動きや事業戦略まで自然とアンテナが広がりました。
いきなり「事業を理解しよう!」と意気込んでも、多くの情報が複雑に絡み合っているため、その複雑さから尻込みしてしまいがちです。そんな時は「自分が何がわからないかが、わからない」状態の可能性が高く、まずは「自分は何がわかっていないか」を明らかにすることから始めます。
頭の中で考えていることをアウトプット、整理整頓して、事業を理解するために何が理解できていないのかを明らかにします。
私が実践しているステップはこちらになります。
i. 頭の中にある全ての情報を見える化する
ii. 情報を仕分ける
iii. グルーピングした情報を構造化する
まず、事業について把握している数字や情報、会議などで頻出しているキーワードなど、頭の中にある情報をすべて書き出します。
この時に私が意識していたのは、綺麗にまとめようとせずすべて出し切ることです。
書き出し、見える化することで「自分はこんなキーワードを知っていたんだ」と自分の頭の中を客観的に把握することができます。
iで出した情報を、グルーピングし仕分けを行います。
例えば、私の場合は「BizHint(事業)」「サービス領域」「ビジネスモデル」「ユーザー」といった形でグルーピングしました。
ある程度グルーピングができたら、必要な情報、不要な情報と取捨選択をしていきます。
不要な情報とは、例えば「メインのユーザーはこう考えている」といった主観に基づいた情報や、「競合サービス」など事業理解をする上で重要性の低い情報のことです。
グルーピングした情報を元に、構造化を行います。
最終的に自分が理解したい「事業ドメイン」や「事業構造」と、グルーピングした情報を紐づけていきます。マインドマップやロジックツリーなどを使いながら、「Aの情報とBの情報がつながってるかも?」とパズルを組み立てるように相関関係や因果関係を整理していきます。
この作業で自分自身が気づいていない「欠けた情報」に気付くことができ、この「欠けた情報」こそが自分自身が事業構造を理解できない原因の「仮説」にあたると思います。
自分が把握していない情報の仮説を立てたら、その情報を埋めていきます。
書籍やインターネットの情報から得られる情報であれば、埋めるのは簡単ですが、多くが事業独自の情報になるので、その情報を知っている人に話を聞くのが最善かつ最短です。
しかし、「話を聞く時間を作ったのに期待した情報が得られなかった」「時間が足りなかった」という経験は少なからずあるのではないでしょうか。
聞き手は「相手が気持ちよく話せる環境をどうやったら作れるか」「限られた時間で、欲しい情報を正確に入手できるか」を考え、事前準備をしっかり行うことが重要です。
私も日々試行錯誤中ですが、意識しているポイントを下記にまとめてみました。
最新の情報を知るために一番重要なポイントです。
最も鮮度の高い情報を持っているのは、事業長や事業企画のメンバーです。
しかし、事業の中枢を担うメンバーとコミュニケーションを取るというのは、現実的に難しい場合も多いのではないでしょうか。
私自身、キーパーソンや意思決定者の元に直接情報を取りにいくことも試しましたが、自分自身が理解できている情報が少なすぎたため、ろくに対話もできず、聞きたい内容も消化できませんでした。
その経験からキーパーソンから得たい情報を書き出して構造化し、「自分に欠けている情報はなにか」「その情報を得るためには誰にどんなことを聞いたら良いのか」を逆算し、身近なメンバーからピースを埋めていくことにしました。
また、職能によって目標や価値観、見解が異なるため自分が欲しい情報を相手からするには、どのように話を組み立てると良いのかなど細かな修正をかけるように意識しています。
これら4つのステップを実践し、私はドメイン知識と事業構造の理解を進めてきました。
改めて振り返ってみると、事業課題を理解してデザインをするために、最も重要なのは「事業ドメイン × 事業構造 × ユーザー」の3軸の解像度を上げることです。
どれか1つだけ解像度が高い状態だとしても、事業にとって価値のあるデザインはつくれません。すべてをバランスよく理解し、事業やユーザー、デザインを「線」で捉えられてこそ、初めて価値を届けられると思います。
私は、デザイナーが「クラフトをする」ことだけに関心を向けてしまうと、活躍できる範囲やデザインの活かせる幅が限定的になってしまうように思います。
情報収集やコミュニケーションの小さな積み重ねから見えてきたことは、デザイナーがビジネスの理解を深めることで、生み出されるデザインが今まで以上にお客様に価値を提供できるのではないかということです。
私自身、「ビジネスのメンバーと対話ができない」悔しさや劣等感から、ビジネスを理解し体系化する試行錯誤をしてきました。今では「どうやったらビジネスとデザインをつなげられるか」を考えてデザインすることが楽しくなっています。
UIをデザインするだけではなく、「事業成長とデザインをどのようにつなげられるか」を考え、デザイナーの役割を広げていきたいと考えています。
事業のキーパーソンや、意思決定者とテキストコミュニケーションするのに尻込みしてしまう方には、デザインマネージャーの梅林のテキストコミュニケーションについての記事も参考になりますので是非ご覧ください。