
事業を前に進めるための、具現化のチカラ
この記事は、2023年5月10日に「Assured Tech Blog」にて公開された記事の転載です。 こんにちは、Assured 事業部デザイナーの戸谷です。 事業推進において、プロダクト開発の次の一手をどうするか?を […]
ビズリーチ事業部でデザインマネージャーを担当している米増です。
昨年、ViViViTさま主催のオンラインイベント「デザナレ」に登壇させていただきました。今回はイベントでの登壇内容を紹介します。
イベントのテーマは「デザインプロセス」について。
「ビズリーチ」の企業様向けプロダクトのデザインプロセスを改善、仕組み化し、デザイン品質の向上・開発サイクルを効率化したプロセスをプレゼンしました。
今回は、プレゼンの中から3つのポイントを紹介します。
チームをマネジメントする立場のデザインマネージャーやプロダクトオーナーのみなさま、チームでプロダクトデザインに取り組むデザイナーのみなさまの参考になれば幸いです。
まずはデザインプロセス改善の背景と、ゴールの定義について紹介します。
「ビズリーチ」のデザインチームが抱えていた課題は、「デザイン意思決定者のリソース不足」でした。
現在「ビズリーチ」のデザインチームは5チームあり、これらのプロダクトデザインを9人のメンバーがチームに分かれて担当しています。メンバーは日々全力で事業やデザインに向き合っていますが、その多くが若手メンバー、という構成です。
デザインの意思決定には、事業長やプロダクトオーナーなどのステークホルダーとの合意形成が必要となります。
当時は私が全ての合意形成の場に同席していました。
その背景には、いずれはメンバーにデザインの制作から合意形成まで全てを一貫して任せられるよう、合意形成に必要な観点を学んでもらうため。加えて、私が複雑性の高い判断の責任をとれるようにするためでした。
しかし、全てのプロダクトの意思決定に参加するにはリソースの観点でも限界があり、デザインのQCDを担保できていませんでした。
そこで、私が意思決定に関与しなくても、デザインが進むようデザインプロセスの改善に着手しました。
デザインプロセス改善が決まり、まず着手したのはゴールの設計です。
ゴールを決めず取り組みの検証と評価ができないバッドパターンを避けるため、「どんな状態で、何ができていたらゴールなのか」を可視化しました。そして、今回はQCDの3つの観点からゴールを設計しました。
ここからは、実施したことを3つの観点で紹介します。
まずは、現状のデザインプロセスの可視化です。
誰が見ても同じ認識を持てるようプロセスを構造に沿って可視化します。
いきなり書籍やWebなどで紹介されているフレームワークなどを導入しようとすると、チームの課題に合わず、失敗してしまうケースが多くあります。そのため、手段から入らず、現状の可視化からはじめました。
プロセスを可視化したら、次は取り組む課題を決めます。
目に見える課題に取り組むのではなく、課題を深掘りして根本にある課題の仮説を立てます。そして、粒度に関わらず全ての課題を洗い出したところ、およそ20〜30の課題が挙がりました。
最初は全ての課題を解決しようとしましたが、リソース不足を解消するためのデザインプロセス改善に、グロース施策からのリソースを割いてしまい、本末転倒な結果になってしまいました。
そこで課題を整理して、どの課題を解決できればインパクトが大きいかを検討し、取り組むべき課題の優先度を決めました。
そして、最後に課題のゴールを決めます。
それぞれの課題で「いつまでにどんな状態」になっていれば解決したといえるか、期日とゴールを明確にします。
このようにAs-Isのデザインプロセスを可視化、課題とゴールを定義して、チームの課題に対する目線を揃えました。その結果、誰もが同じ認識で課題に取り組めるようになったので、会話がスムーズになり、不要なコミュニケーションが減りました。
2つ目のポイントは「開発組織で作る」です。
デザイナーだけで進めず、プロダクト開発チーム全体を巻き込みました。
どんなプロダクトもデザイナーだけでは作れません。
デザインプロセスは大きな開発プロセス全体の一部分であるため、プロダクトオーナーや、エンジニア、ビジネスチームなど、さまざまなステークホルダーとの協働で開発は進みます。
デザイナーが感じた課題を解決するため、独断でプロセスを改善しても、開発プロセス全体の中で機能しなければ、本質的な改善とは言えません。
私たちはデザインプロセスの改善をデザイナーだけに閉じず、他職種のステークホルダーやチームに、課題やその経過を共有しながら進めました。
共有した後には、必ずフィードバックをもらいます。
「デザイナーではないからこそ気付けること」もあるので、他職種の視点で見たフィードバックは改善の成功には不可欠です。
もちろん、内部のデザインチームとの連携も忘れてはいけません。
実際にデザインプロセスを実行するのは現場のデザイナーです。
現場の課題感やそれぞれの立場における状況や視点をすり合わせつつ、進捗を共有したり、ネクストアクションを決めたりします。
マクロで見たデザインプロセス全体の構造課題と、ミクロで見た現場で生じる課題を行き来しながら、メンバーと意思疎通をとっていきました。
デザインチーム内外のメンバーを巻き込むメリットはもう一つあり、協力者が増えて、1人では気付けない視点に気付けることです。
1人で進めるには限界があるので、実際に多くの人の力を借りて、私だけでは気付けない課題にも気付けました。
最後の観点は小さくPDCAを回し続けることです。
最初に設定した課題はあくまでも仮説でしかなく、当初の課題のままで最後まで問題なく改善が進むケースは少ないです。フィードバックや状況に応じて、課題をアップデートし、小さくPDCAを回しながら進めていく。
最後までPDCAを回し続けることで、チームに最適なデザインプロセスができあがります。
デザインプロセス改善にあたり、最初に決めた以下のゴールに対する結果を紹介します。
QualityとCostの観点では、デザインプロセス内で各メンバーの担当範囲、責任範囲が明確になりました。
それに伴い、マネージャーの私が持っていたデザインの意思決定責任を現場のメンバーに委譲し、デザインの品質を担保しつつ、チームに対するマネジメントコストを削減できました。
また、各メンバーが責任を果たすために、何をすべきかが考えやすくなり、デザインレビューのチェックリストを作るなど、品質担保のための活動も進んでいます。
Deliveryの観点では、それまでメンバーごとに進めていたデザインの知見が共有され、誰でも一定の品質を保ったままアウトプットできる仕組みができ、開発サイクルのスピードが上がりました。
結果として、当時3ヶ月の遅延があった大型プロジェクトを期日通りに完遂できました。
当初掲げていたゴールを達成したため、今は同じビズリーチ事業の違うデザインチームにも、このデザインプロセス改善の「型」を横展開しています。
チームによって開発環境やチームの課題は違います。そのため、成功した型をそのまま展開せず、チームの課題を見極めて、横展開する方法とチームの課題にあった方法を使い分けながら、進めていきたいと考えています。
最後にデザインプロセス改善にあたってのポイントをまとめます。
今回はデザインプロセスの改善を中心に紹介しました。
この改善は私1人ではできなかったため、チームでコトに向き合い動いてくれたメンバー、そして叱咤激励のフィードバックをいただいたみなさまに感謝したいです。
時と場合によっては、専門的なフレームワークは大きな成果をもたらします。しかし、今回のように課題を定義してチームでPDCAを回しながら解決するという観点で捉えると、一般的な課題解決のフレームワークと大きな相違はなく、改めてその重要性に気付かされました。
プロセスの変更は多くの人に影響が出るため、いきなり大きく変更するハードルは高いかもしれません。しかし、周囲を巻き込み小さく何度も取り組んでいけば、自ずと成果は出ると思います。
私たちの取り組みがみなさまにとって、デザインプロセス改善の一助になれば幸いです。