Visional Designer Blog

事業づくりは、仲間づくり ロゴデザインからはじめる組織の文化づくり

こんにちは、デザイナーの狩野です。
ビズリーチ事業部で求職者向けWebサイトとスマホアプリのグロースを担当しています。

Visionalのデザイナーは、日々サービスをご利用いただいているお客様の課題と向き合いながら、その課題をデザインのチカラで解決することで、事業づくりに携わっています。私たちのデザイン・フィロソフィーでは、デザインの対象を、プロダクト、サービス、コミュニケーション、キャリア、ビジネス、経営、社会など、「すべて」と考えています。

今回はその中でも、「組織」の課題解決のために立ち上がったプロジェクトのロゴの制作プロセスと、デザインを通して組織の文化づくりに携わった話を紹介します。

リモートワークが事業成長に及ぼす影響

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、Visionalでもリモートワークが続いています。

私の周りでは「仕事に集中できる」「公私のバランスが取りやすくなり、生活が充実している」「通勤時間を自己投資に費やせる」など、プラスに感じられるという声を聞きます。

一方で、社員同士がつながるきっかけとなるアクションが失われているという声もあります。例えば、出退勤の挨拶、社内で偶然生まれる雑談、隣のチームの会話が聞こえてくるなどの機会です。こうした機会から、新しいアイデアが生まれたり、社員同士の関係性が良くなったりしていくと考えられます。さらに言えば、組織、そして事業の成長にもプラスに働くのではないでしょうか。

私の所属するビズリーチ事業部は、創業期から成長を続け、年々事業部も拡大しています。そのため関わる社員数も多く、社員同士の関係性が事業成長に与える影響は小さくないのではという課題意識が事業部でも生まれはじめていました。

社員同士の関係性を強化するプロジェクト「ミールス」の発足

そこで発足したのが「ミールス」という、ビズリーチ事業に関わる社員の関係性を強化していくプロジェクトです。

日々の業務で社員同士のつながりを意識する文化を醸成するために、「ミールスしている? = あなたの周りにいる人とコミュニケーションしてる?」という合言葉を浸透させたい。その想いをカタチにすべく、私はミールスのロゴのデザインを中心に、プロジェクトに関わりました。

プロジェクトの詳細はVisionalの企業ブログ「All Visional」に掲載された、プロジェクトメンバーのインタビューをご覧ください。

All VIsional | 仲間との“つながり”が、新しい可能性を生み出す。ビズリーチ事業部の関係性強化プロジェクト「ミールス」を紹介します。

ミールスの由来と、ミールスが描く世界

なぜ、関係性を強めるために立ち上がったプロジェクト名が「ミールス」なのでしょうか。

プロジェクトチームの方とプロジェクト名の話をしていたとき、その方が大のカレー好きなことから、私がドバイに行った際、カレーを知人と囲みながら楽しく食べていたシーンを思い出すようになりました。その思い出を伝えたところ、まさに実現したい世界観はそれだ、と盛り上がりました。

カレーの中でも特に、沢山の具材をライスの上で混ぜながら食べる南インドの食事を「ミールス」と言います。沢山の具材のように、それぞれ違う個性を持った人たちが、一つの場所に集い同じ時間を共有することをきっかけに、つながりができる。そこから会話が弾み、笑顔が生まれ、次につながっていく。

そんな世界観を体現する組織や文化をビズリーチ事業部内でも描き、実現したい思いから、プロジェクト名が「ミールス」になりました。

実際にドバイで囲んだカレー

ロゴの方向性を決めていく

ここからはミールスのロゴが出来上がるまでのデザインプロセスを紹介します。

まず、ロゴのアイデアの幅を広げていくために、デザインコンセプトとなりそうなキーワードを抽出する作業を行いました。ミールスが描きたい世界観から4つのワード「人々が集う」「ミールス(カレー)」「会話のきっかけ」「関係性ができる」を元に、そこから連想されるキーワードを洗い出しました。

その中から今回ピックアップしたものは「会話が弾む」「ハーモニー」「笑顔」「つながり」の4つです。この4つのキーワードを元に、デザイン案を展開しました。

展開したデザイン案の中から、「1.会話が弾む」「2.調和が生まれる」「3.個と個が出会う」「4.笑顔が繋がる」それぞれのコンセプトがイメージしやすいアイデアをピックアップし、デザイン案を作成しました。

プロジェクトチームにデザインアイデアを共有したところ、「社員一人ひとりが交わる、すなわち個と個が出会うことで、笑顔が広がっていく様子を表現したい」という意見をいただきました。その意味合いを表現している「3.個と個が出会う」「4.笑顔が繋がる」の案をベースとし、さらにデザイン案に磨きをかけていきました。

またこの際、「ミールス」をどのような表記にするかが大きな議論の的となりました。

タイポグラフィに笑顔の要素を盛り込んだ「Me:)ls」、ミールスを英語表記にした「MEALS」、meeting、meetなど、人と対面する時に使用する英単語「meet」の意味合いを盛り込み造語にした「MEELS」、単語として認知しやすく発音もイメージできるカタカナ表記「ミールス」と、プロジェクトチームとデザイナー側から複数案が出ていました。

ミールスを覚えてもらい、「ミールスしてる?」と声かけが生まれる文化をつくりたい、という思いと、ミールスのコンセプトを英語で表現した時の単語の頭文字「Mixture of Enjoyment, Encouragement, Link, and Smile」から、メインはカタカナの「ミールス」表記とし、英語表記は「MEELS」に決まりました。

また英語表記に意味合いを持たせたことにより、それぞれの単語のイメージカラーが見え、ミールスのメインカラーがこの段階で大枠決まりました。Enjoyment(楽しみ) = 赤、Encouragement(勇気付ける)= 緑、Link(つながる)= 青、Smile  = オレンジ です。

4つの観点からロゴをブラッシュアップ

ここからは方向性の決まったデザイン案をブラッシュアップする段階に入ります。

デザイナー同士のレビュー会に制作中のロゴを出し、客観的なフィードバックを受けながらブラッシュアップを行いました。その過程で、大きく4つの観点からフィードバックを受けたので、その内容を具体的にお伝えします。

1.コンセプトが表現されているか

ロゴマークは、ミールスのコンセプトである「個(社員)と個(社員)がつながることで、笑顔が広がっていく」がビジュアルに落とし込まれ、その世界観を感じられるような状態にする必要があります。

初期案では「個と個のつながり」は、点と点の軌跡を描くことで表現できていましたが、「笑顔」の要素が表現されておらず、どこか幾何学的で人間味のないデザインになっていました。笑顔を意識しすぎると、花を想起させる造形になってしまい、落とし所がなかなか見つけられない状態が続きました。

そのとき、レビュー会の中で受けた意見「メインキャラクターをつくって展開するアイデア」を思い出すようになりました。点と点の軌跡で顔の表情をつくる。ここで誕生したのが、ミールスのメインキャラクターとなるミールスくんです。ミールスくんをシンボルにも展開できないか試行錯誤して、生まれたのが、最終形のシンボルマークです。

2.シンボルマークが造形として美しいか

コンセプトが表現されていたとしても、ロゴマークそのものが造形として美しくあってこそ、存在感を示せます。

初期案は余白が多く、繊細な印象のデザインでした。そこから線の太さを変更したり、シンボルに含める図形の数を増やしたり、図形の重ね方や回転のさせ方を何パターンも試しました。

3.ロゴタイプがロゴマークと調和しているか

ロゴマークの美しさを追求しながら進めていたのが、ロゴタイプです。今回のデザインプロセスの中で、一番の苦戦ポイントでした。

既存フォントを使用すると、ロゴマークと全く合わない。一から作字するにしても、なかなかデザインの幅が広がらない。そのため、すでにあるカタカナロゴをたくさん集め、アイデアをインプットするところからはじめました。

そこからデザイン案を出し、ロゴマークと合わせていく。今回ロゴマークが特徴的だったので、ロゴタイプはロゴマークを立たせる、シンプルなつくりのものを選択しました。

さらにロゴマークと調和させるために、線のカーブの位置や、先端の丸みの付け方にもこだわりました。こうした試行錯誤を経て完成したものが、現在のロゴマークです。

4.展開しやすいデザインか

ミールスのロゴ完成後、「ミールスウィーク」という、ミールス主催のイベントのロゴもデザインすることになりました。

ミールスウィークのテーマは「”つながり”について考える1週間」。イベントのコンテンツを通じて、人と人とのつながりを考えるきっかけづくりを目的としています。

ミールスウィークのロゴのデザインをする際、2つのことを大事にしました。

一つは、今後も展開しやすいデザインにすることです。ミールスは短期的なプロジェクトではありません。そのため、今後もミールス主体のコンテンツが誕生し、その都度コンテンツに合わせた新たなロゴが必要と考えられます。ですので、ロゴタイプ「ミールス」部分を使用したロゴにしようと考えました。

もう一つは、”つながり”がより伝わるデザインにすることです。人と人とのつながりを考えることがテーマのイベントのため、”つながり”をより強調したデザインにしたいと考え、ウィーク(Week)を筆記体で表現しました。

ミールスのロゴタイプとWeekを合わせてみます。すると、ミールスのロゴマークのポップな雰囲気と比べると、ロゴタイプは幾何学的でどこか人間味の薄いデザインになっていると気づきました。

今後もミールス主体でコンテンツが増えてくることを想定し、このタイミングでミールスのロゴタイプをブラッシュアップすることにしました。

ロゴを展開する機会があったからこそ気づきましたが、こうしたケースは他の案件でも起こり得ることだと思います。そのことも想定して、展開しやすく柔軟なデザインを心がけつつ、関係者とも合意を取りながら進める大切さも学ぶ機会になりました。

誰でもロゴを活用できるように

ミールスでは多くの企画を実施しています。そこで、デザイナーが入らなくとも、プロジェクトチームが自由にロゴマークを使用できるように、ブランドガイドラインも作成しました。

作成したガイドラインはすでに運用が始まっています。

ミールスでは活動の一つとして、社員を紹介する社内報「となりーち」を運営しており、ミールスのロゴマークとミールスくんを使用しています。その際、ロゴマークやミールスくんの使い方は、デザインガイドラインを参考にしながら運用してもらっています。

ミールスを事業部に浸透させる

ロゴをデザインしても、ミールスが浸透しないと、プロジェクトのゴールは達成されません。

そこで完成したミールスのロゴをビズリーチ事業部内に浸透させるために、月次で開催されているビズリーチ事業部の締め会と、事業部全体のSlackチャンネルで告知しました。その際に、ロゴやミールスくんのSlack用スタンプやZoom背景を展開しました。

Slackは、社員の反応がダイレクトに見える場所です。プロジェクトチームが、関係性づくりに関するコンテンツや事業部の情報を発信する。すると、その投稿にミールスのロゴマークやミールスくんのスタンプが押される。そのような相互コミュニケーションがSlackで生まれました。

また全社にミールスのZoom背景を配布してから、愛用してくれている社員もいます。ミールスはビズリーチ事業部向けのプロジェクトではありますが、他の事業部とのミーティングでミールスの背景を使用していると、「それはなんの背景ですか?」と質問をよくいただきます。それが他の事業部の方との会話のきっかけになり、ビズリーチ事業部だけでない社員との関係性の強化になることも体験しました。

終わりに

オンライン下でのコミュニケーションが主流となっている昨今だからこそ、相手の発信した内容や発言にリアクションすること、意図的に会話のきっかけをつくることの大切さをミールスを通じて、より感じました。

それは仕事だけでなく、大切な家族や友人に対してもです。ライフスタイルも含めて働き方が見直される時だからこそ、関わりのある人たちとのコミュニケーションも見直していきたいと思います。

また、ミールスのロゴデザインプロセスを通じて、組織の文化づくりにもデザインのチカラで貢献できることが伝わったでしょうか。事業の成長のために、これからもデザインのチカラを信じて業務に向き合いたいと思います。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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