Visional Designer Blog

組織づくりをリードする2人が選んだ、組織と文化をデザインするための6冊

こんにちは。ビズリーチ事業部で企業さま向けのWebサイトの改善を行なっています松永です。


今回は、株式会社ビズリーチのCDO(Chief Design Officer)を務める田中裕一、Visionalのデザイン組織における人材領域の取り組みを推進するデザインプログラムマネジメント室で室長を務める神志那彩に、組織づくりのため参考にした本を中心に、3つの観点からオススメの本を選んでもらいました。

  1. 組織・文化づくりの参考にした1冊
  2. 組織づくりに興味があるデザイナーにオススメの1冊
  3. 現在取り組んでいる課題の参考にしている1冊

私たちのデザイン組織では、「We DESIGN it.」というデザイン・フィロソフィーを掲げており、1. 課題解決 2. 目的思考 3. ユーザー中心 4. 心をつかむ 5. 楽しむ からなる「5つの約束」のもと活動しています。

このデザイン・フィロソフィーはVisionalのデザイナーが立ち返れる内容になっており、組織の共通言語、文化の土台になっています。

それぞれの持ち場でデザイナーが本質的な課題を解決し、より価値を発揮できるよう、こうした組織・文化づくりもデザインの対象とし、組織の立ち上げ時から力を入れてきました。

現在進行形でVisionalの組織づくりを担う2人が選んだオススメの本が、組織・文化づくりに挑戦している方の参考になれば幸いです。

組織・文化づくりの参考にした1冊

新訂 孫子

金谷 治 翻訳 / 岩波書店 / 2000.4.14発売

中国最古の兵書として伝えられている、いわゆる「戦いのためのはかりごと」の最高峰として広く長く伝承されており、諸葛孔明や曹操、ナポレオンなども活用したと知られています。

ソフトバンクの孫正義さんが「孫の二乗の兵法」とアレンジして経営戦略に導入していることは有名ですが、戦争一般のみならず、経営戦略、組織戦略、デザイン戦略と、あらゆる場面で用いられる「戦略」という概念すべてに通じ適用することが出来る、普遍的な考え方の本質です。

私が自分の中に思考やプロセスを取り入れる時は、動脈になる普遍的な知識を入れることをやり方としていますが、この孫子は、戦略、リーダーシップや組織論はもちろん、アセットマネジメント、リソースコントロール、意思決定までの思考プロセス、決断・判断、差配、集団心理など、およそマネジメントすべてに通じるフレームワークとしても取り入れ活用しています。

個人的に最も優れた戦略論だと思っており、28歳の時に出会い今でもバイブルとして常に携帯しています。

デザイン的な考え方、デザインの歴史的背景、デザイナーのスキルセットから見ると多くがかけ離れたものでありますが、大きく離れた双方の思考を行き来することでビジネスとの架け橋となり、すべての共通言語としての意思決定・翻訳機能を果たし、またデザイン的な思考・アプローチを加えることで、より本質的で発想力に溢れた戦略を描きつつ、現代のスピード感と不確実性を前提としたビジネス環境にフィットした戦略・戦術を実行することができます。

個人的にはデザインマネジメントに関わる方にはぜひ読んで頂きたいです。

(CDO:田中 裕一)

ザッポスの奇跡 アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略

石塚 しのぶ 著 / 廣済堂出版 / 2010.12.21発売

企業文化による競合優位性を作ってきた、アメリカの靴のEC会社「ザッポス」について記した本です。

私自身が組織作りに関わり始めたタイミングで読んだ本であり、組織のカルチャーや価値観というものの重要性、さらにはそれによって組織がこれだけ強くなるということを知ったとても印象深い1冊です。芯となるコアバリューをどう定義し、どう浸透させ、仕組みや制度をどう作り、さらにそれをどう企業としての強さに変えていくのかという、一貫した考え方や取り組みが学びになります。

組織作りの本ではありますが、副題で「新経営戦略」とあるように、経営資源としての文化を最大限に活かし、それによって売上をあげながら社員も顧客も幸せになるという未来を戦略的に構築していくという意味でも示唆を得られます。

会社によって直接的に取り入れるのは難しい部分もあるかと思いますが、確固とした正解がない組織づくりに対して、カルチャーという側面から考える軸を与えてくれるかと思います。

(デザインプログラムマネジメント室 室長:神志那 彩)

組織づくりに興味があるデザイナーにオススメの1冊

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

クレイトン・M クリステンセン 著, タディ・ホール 著, カレン・ディロン 著, デイビッド・S・ダンカン 著, 依田 光江 翻訳 / ハーパーコリンズ・ジャパン / 2017.8.1発売

『イノベーションのジレンマ』の著者、クレイトン・M・クリステンセン氏の『ジョブ理論』は、デザイン本では無いのですが上げさせていただきました。

デザイナーが読むと、既視感や懐かしさを覚えるかもしれません。

「顧客のジョブを捉え本質的な課題に提案し、採用してもらう」という、サービスやプロダクトづくりの考え方は、『デザイン・ドリブン・イノベーション』で云われている内容ととても似ており、元を辿ればデザイン的アプローチに近似しています。

私が何か考え実行する時は、全く異なる事象や思考に類似点を見出し統合するという方法をよく行っていますが、ジョブ理論においては「顧客」を「従業員」、「顧客のジョブ」を「従業員のジョブ」として捉え、組織づくりに活用しています。

どうしても社内向けのあらゆる戦術や施策というものは、従業員を深く理解せずビッグバンリリースしてしまいワークしないことが多いですが、そこにはデザイン的アプローチが性質上、絶大な効力を発揮すると、実績から実感しています。

そして、ジョブ理論は「デザイン」という視点での切り口で無いからこそ、あらゆる側面(組織・人・プロセス)で適応しやすい整理になっています。

事象や課題を深く捉え、優れたアイデアとスピーディなPDCAが実現出来るものでありながらビジネスのフィールドで応用しづらいデザイン的アプローチに近似した内容が、ビジネスの言葉で語られているので、他の物事への翻訳や接続、統合が大変イメージしやすいです。

モノづくりに関わる方、デザイナーであればとても読みやすい内容になっているので、お読みの際はモノづくり的観点だけでなく、組織・人・プロセスに応用することを想像・類推しながら咀嚼頂けたら新しい気付きがあるかもしれません。

(CDO:田中 裕一)

他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論

宇田川 元一 著 / NewsPicksパブリッシング / 2019.10.4発売

組織の中で他者と働いていく中で、「わかりあえなさ」に向き合い相手との間にある溝に橋をかけていく、ということをテーマにした1冊です。

その方法として、相手を変えるでも自分を変えるでもなく、「対話を通して自分の解釈の枠組みを見直し、新しい関係性を構築すること」と置き、そのための具体的なプロセスも提示しています。

組織づくりやマネジメントに関わる中で、相反する意見が収束せず問題が起きたり、自身の想いがきちんとチームに伝わらずに苦労したりすることがあるかと思います。

そのような「うまくいかない関係性」に対して、組織の関係性の作り方をアップデートしていくという視点で一助になるかと思います。また、相手を観察するところからスタートし、自分と相手の世界に橋をかけていくというアプローチは、ユーザー視点の習慣があるデザイナーには取り入れやすいと考え、紹介させていただきました。

(デザインプログラムマネジメント室 室長:神志那 彩)

現在取り組んでいる課題の参考にしている1冊

群衆心理

ギュスターヴ・ル・ボン 著, 桜井 成夫 翻訳 / 講談社 / 1993.9.10発売

組織やコミュニティは「ヒト」の集合体ですので、人への向き合い方に対して技術・経験・知識を積み上げてPDCAすることは重要な要素だと思いますし、有事の際にはとても変数が大きく、力を使わざるを得ない領域です。

『群衆心理』には、ヒトの集合体である「群衆」がどのように考え、どのように動き、どのように作用するかが細かく説明されており、フランス革命やナポレオンの行動を実例として交えながら書かれています。

私はベーシックな発達・認知・行動心理学の中からマネジメントで活用出来るものを適宜取り入れていますが、その多くは「個」に対するもので、この「群衆心理」は「多数」に対する際に役立つ心理学的知見の内容となっております。

『分断を生むエジソン』(こちらもオススメです)でいうところの南の国である「大衆・群衆」、および「群衆の中における個」が、純粋な「個」とは否が応にも性質が大きく変化してしまうこと。

それがどのように変化するのか。そしてどのように革命的な力、もしくは破壊的な力を及ぼし、歴史を変革させてきたのか。そして「群衆」であるヒトのコミュニティをどうディレクションし、マネジメントすることが懸命なのかがインストール出来る本です。

ぜひチームの規模が大きい組織長や、リーダーシップが必要なポジションを担っている方は、孫子同様「普遍の知識」として取り入れて頂くことをオススメします。

(CDO:田中 裕一)

図解 人材マネジメント 入門

坪谷 邦生 著 / ディスカヴァー・トゥエンティワン / 2020.6.26発売

私自身は現在、デザイナーを対象とした人財・組織開発に携わっており、入社に至るまでの採用から、入社後の育成や評価、組織運営まで広い領域を担っています。

これらの領域は、社員全員が関わることであるためイメージを持ちやすい一方、情報が偏りがちな側面もあります。また広い領域すべてに対して深い知識を持つことの難しさもあり、施策立案の際にさまざまな観点が網羅できているか懸念がありました。

その中で、様々な観点を全体網羅して把握するために活用しているのがこの『図解 人材マネジメント 入門』です。人事評価、採用、組織開発など、人事領域全般に対して理論と実践が抑えられているため全体感の把握としてはもちろん、現場の課題に対して思考していく際に辞書的に逆引きして読むことで観点の確認ができます。

組織開発に携わる人以外にも、マネジメントとして人や組織に関わる方にもおすすめです。

(デザインプログラムマネジメント室 室長:神志那 彩)

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