Visional Designer Blog

「浸透していないペルソナを機能させるには?」新卒デザイナーがチームの課題を解決するまで

こんにちは、2021年新卒入社のプロダクトデザイナーの小倉です。

新卒事業部で、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」のUI/UXデザインと、フロントエンド環境のリニューアルに向けた移行開発を担当しています。

2021年6月から新卒事業部に配属され、初めてのタスクとして既存ペルソナのブラッシュアップと開発チームへの浸透を行いました。

そこで今回は、「ペルソナが作りっぱなしで使われていない」「ユーザー理解度を上げて質の良い価値を提供するために、チームにペルソナを浸透させたい」方に向けて、私が取り組んだペルソナのブラッシュアップ・浸透事例を紹介したいと思います。

今回チームにペルソナを浸透した結果、ユーザー目線でプロダクト開発が出来るようになったことで、ユーザーのインサイトにアプローチした機能開発に繋がりました。

タスクのアサインからペルソナ浸透施策を実行するまでに、3つのことを行いました。

  • 開発チームのヒアリングを通して、本当に解決すべき課題とゴールを定義
  • アンケートデータをもとにした仮説検証とチームを巻き込んだペルソナ設計
  • ペルソナ浸透会やペルソナに関するテストを実施した浸透施策

依頼に対して、本当に解決すべき課題を探しに行く

当初、任せられた仕事は「ペルソナをブラッシュアップして欲しい」というシンプルな要件でした。

しかし、そのままブラッシュアップをするのではなく、「何のためにブラッシュアップが必要なのか?」「依頼した背景は何か?」「 現場が抱えている課題は何なのか? 」などをヒアリングを通して探りにいきました。

なぜなら「デザイナーとして本来解決すべき現場の課題は何なのか?」「 その要件が本当に課題に対して適切なのか? 」をヒアリングを通して探りに行くことが重要だと考えたためです。

声を聞いて、本当に必要だったものを明確に

ユーザー、開発チーム、プロダクトオーナーへのヒアリングを通して、本当に必要だったものは「ペルソナのブラッシュアップ」ではなく、ペルソナを浸透させて開発チームを以下の状態に導くことでした。

  • ユーザーの潜在的なニーズに応える提供価値を作ること
  • 開発チームのユーザー理解度の足並みを揃えて属人化をなくすこと
  • 現在使用しているペルソナの情報をブラッシュアップし、最新のユーザーを把握すること

このように、ただ与えられた依頼に対応するのではなくデザイナー自身が「どんな課題があり、何を解決すべきか」を明確にしていくことは、課題解決において必要なことだったと思います。

ビズリーチ・キャンパスの開発チームが抱える課題

前述の状態に開発チームを導くために、本当に解決すべき課題を以下と定義しました。

  • ユーザーを知るための情報が不足している
  • ユーザーの理解度が偏っている

ユーザーを知るための情報が不足している

開発チームはエンジニアやデザイナーがほとんどで、ビズリーチ・キャンパスのターゲットである文系学生の就職活動を経験していないメンバーが多く、ユーザー理解の参考となるペルソナの重要度の高さは明白でした。

既に学生側のペルソナは存在しているものの、作成当初から現在のユーザーに合わせて情報がアップデートされていなかったり、必要な観点が浸透しておらずエンジニアやデザイナーが議論に参加しにくくなっていました。

ユーザーの理解度が偏っている

文系学生の就活状況に詳しいデザイナーが学生側のプロダクトを担当しており、そのデザイナーしかデザインを進められない属人化が生じていました。

また、開発メンバーによってユーザーの理解度にバラつきがあり、ユーザーの解像度が高いプロダクトオーナーの発言や企画に議論が依存しかけているなど、チーム全員の力を使ってプロダクトを開発できているのか不透明な状況でした。

情報を集めて仮説を検証する、ペルソナブラッシュアップのプロセス

何のためのペルソナなのか?

ペルソナを作ったり、ブラッシュアップしたりする前に、まず気を付けることは目的達成のためにどんな情報が必要になるかを定義することです。

今回のブラッシュアップの目的は「開発チームのリアルなユーザーの理解」と「開発チームのユーザー理解度の足並みを揃える」こととしていたため、この2つの要件に対してどんな情報が必要かを考えました。

「リアルなユーザーを理解するにはどんな情報が必要か?」を考え、そのために必要な情報を定義していきます。

例えばビズリーチ・キャンパスでは「就職活動のフェーズごとに変化する学生の心境」や「就職活動のフェーズごとに取る学生の具体的な行動」はユーザーを理解するには大切な要素です。

情報を収集して、仮説をもとにブラッシュアップしていく

必要な情報が定義できた後は、ユーザーの声やユーザーに詳しい人から情報を集めて、それらの情報を元にまずは仮説ベースで暫定的なペルソナを作成していきました。

途中成果物のペルソナ

新卒事業部では、ビズリーチ・キャンパスに携わる社員と学生の間でキャリア面談を頻繁に実施しているため、自分は何度も学生面談に同席してユーザーのインサイトや悩みなどを探りました。

想像上のペルソナとリアルな学生を重ねる

仮説をもとにペルソナを作成できたら、そのペルソナがリアルなユーザーの実態に沿っているか整合性を担保するためにユーザーアンケートを設計・実施し、仮説検証を行いました。

アプリを利用いただいているユーザー172名、ビズリーチ・キャンパス主催のイベントに参加いただいたユーザー100名、合計272名のユーザーに意識アンケートを行い、定量的なデータを集めました。

チームと一緒に作り上げることで、理解を深められる

アンケートの結果や、学生との面談経験が豊富な社員と議論を重ねながらペルソナのブラッシュアップが完了しました。

ここで良かったポイントは、いろんな人を巻き込みペルソナに対する意見をもらったり、議論を交えることで、関わったメンバーのユーザー理解が進んだことです。

こうしてユーザーの代表となるペルソナのブラッシュアップが完了しました。

30名以上の開発チームにペルソナを浸透させる

作成よりも難しい、ペルソナの浸透

一番難しかったことは30名以上の開発チームに、作成したペルソナを浸透させることでした。

ペルソナを作成したとしても、主体的にペルソナの情報をインプットしてもらったり、ちゃんと浸透したかを示すため個人の理解度を把握したりする必要があったからです。

ペルソナ共有会の実施

開発チーム全員にペルソナを浸透させるために、「ペルソナ浸透会」を実施しました。

ペルソナの説明を行うインプットの時間と、ペルソナに関して意見を出してもらうアウトプットの時間を通して、メンバーのユーザー理解を促進させることがこの会の目的でした。

具体的な実施内容は、理解促進のためペルソナがとりそうな行動に関するクイズを用意し、グループごとに議論した上で開発チーム全体で回答をすり合わせる時間をとるなど、会そのものにも工夫を凝らしました。

メンバーのユーザー理解度をテストで定量的に把握する

ユーザーの理解度向上を行うことで潜在的なニーズの発掘やプロダクト開発の品質担保につなげることを目的としていたので、各自の理解度・浸透度を定量的に証明する必要がありました。

ペルソナ浸透会の終了後、各メンバーのユーザー理解度が向上したか、ペルソナが浸透しているかをチェックするため、ペルソナに関する問題集を作成して開発チームに受験してもらいました。

回答スコア80点以上を十分にユーザーを理解できた状態と定義し、回答を集計。

見事全員が80点以上を獲得でき、チーム全員がユーザーを理解したことを定量的に証明できました。

この結果からチームが一定のユーザー理解度を持てている確証を得られ、チームのユーザー理解度の足並みを揃えることできました。

ペルソナブラッシュアップ・浸透施策の成果

ユーザー視点でプロダクトの価値を問い続けられるようになった

一番大きな成果はペルソナが浸透したことで、プロダクトの価値についてユーザー目線で議論できるようになったことだと捉えています。

開発チームがプロダクトに対して「学生にとってベストな体験か?」「学生には価値ある機能なのか?」など、ペルソナを基にしたユーザー目線の意見により、議論が活性化することが増えました。

新規機能ブレストに利用され、実際の機能に

また、アプリの新規機能ブレストにてペルソナが活用され、よりユーザーの求めるであろう機能開発へと繋がりました。

他の学生の就活状況が見れるワンタップアンケート

ペルソナを通じた議論により、インサイトを狙った新機能が誕生しました。

施策に挑戦して得られた能力

今回の施策を通じて、目的を達成するための課題解決能力を磨く経験が積めたと考えています。

具体的には「開発チームにはどんな課題が存在しているのか?」「今のペルソナが抱えている課題は何か?」を探り、要件を再定義していく課題発見能力を磨けました。

また、ペルソナをチームに浸透させるにはどんな情報、どういう施策が必要か?など目的達成のために何が必要か解決策を考える力と、自ら周囲を巻き込んでいく巻き込み力が今回のペルソナ浸透で身に付けられたと思います。

後日談:新卒こそ、声を上げて取り組みを発表してみる

デザイン組織全体に向けて、取り組みの横展開

Visionalでは声を上げれば新卒が取り組みの内容を発表する機会をもらえます。

デザイン組織としても、ユーザー理解は1つの注力課題だったこともあり、この取り組みを他事業部にも波及させたいと感じました。

そこで、ペルソナ浸透の実施内容をVisionalデザイナー全体に、新卒デザイナーの取り組みとしてプレゼンしました。

当時の発表資料

結果として、他事業部でも商談同席や、商談映像を見え返してユーザー分析する取り組みが始まり、デザイナーのユーザー理解の取り組み促進につながりました。

発表終了後、各デザイナーからユーザー理解の取り組みに対する声

UX施策は短期的な事業成果に繋がりにくいことから、優先度が低く見られがちで、着手が後回しになってしまうことが多いと思います。

しかし、土台となる「誰に、何を提供するのか?」「誰が、今どんな状況なのか?」を深く考える為の土台作りは、長期的に事業やチームの利益になると考えています。

今回の記事が読者のみなさんの参考になれば嬉しいです。

お読みいただきありがとうございました。

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