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デザイナーの僕がエンジニアリングを学ぶ理由 —— エンジニアリングを学ぶべきか迷っている方へ

こんにちは、2018年新卒入社のプロダクトデザイナー 村上です。
新卒事業部で、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」のUI/UXデザインと、iOS/Androidアプリやユーザー行動の数値計測などの実装も担当しています。

デザインと並行して実装を担当するなかで、「デザイナーがエンジニアリングを学ぶことの価値」を確かに感じてきました。

業務の中でエンジニアリングを学び、理解することで、意思決定者やエンジニアに、コストを見積もった上でデザインや施策の提案ができるようになりました。
その結果、今では主体的に周りを巻き込んで施策を進めています。

今回はその具体例を、
「AppStoreのレビュー向上施策の提案から公開までを1週間で行い、アプリの評価を2倍にしたことで、インストール率が上がった」事例をもとに説明します。

そして、記事の最後にはなぜデザイナーの僕がエンジニアリングを学ぶのか?と、僕自身が長期的に目指すデザインエンジニア像をご紹介します。

ずっとレビューの低かったビズリーチ・キャンパス

ビズリーチ・キャンパスはiOS/Androidアプリ、Webアプリでサービスを提供していますが、各ストアにおけるレビューが低い問題を抱えていました。

ストアのレビューは、ユーザーとなる学生のインストール率やアクティブ率など重要な指標にも影響するため、事業の機会損失にもつながっています。

2020/12/14 19:00時点のレビュー

しかし、セールスのメンバーやユーザーヒアリングでは、ビズリーチ・キャンパスに価値を感じている声を何度も聞いていたので、
定性面ではポジティブな評価があるのにストアのレビューが低いのは、何か課題が潜んでいるはずだと考えました。

価値を感じてくれているユーザーが、評価してくれるように

レビューの理想的な状態は、「レビューが高い評価を保ち続けている状態」です。

その状態に至るための課題として、「ビズリーチ・キャンパスにポジティブな印象を持ち、使い続けているユーザーがいるなら、アプリに価値を感じている人は少なくないはず。その人たちに評価してもらえていないのでは」と考えました。

その課題に対して行った施策は、「AppStoreレビューの訴求を、ビズリーチ・キャンパス内でユーザーにとって価値ある体験ができたタイミングで表示する」というシンプルなものです。

具体的なタイミングは、学生がOB/OG訪問を完了してお礼コメントをしたとき、企業からのスカウトを承諾したとき、イベントへの応募を完了したときです。

レビューは2倍に、インストール率も向上

施策の結果、リリースから1週間でレビューが2倍になりました。

2020/12/25 17:00時点のレビュー

その後は高評価を維持しつつ、レビューの数も増えています。

2021/3/4 12:00時点のレビュー

さらに、そのレビュー向上によって、12月から1月におけるAppStore内検索からのインストール増加率が、前年同期間と比べて118%から174%になりました。
※就活サービスは時期ごとにインストール率の波があるため、昨年同時期と比較することが多い。

AppStore内検索からのインストール数の推移(Adjustで計測)

このような施策を実施したことで、レビューだけでなく、事業成長への影響がある「アプリインストール数」でも成果を出すことができました。

しかし、これまでの自分は、このような提案や施策を主体的に進めることができませんでした。

なぜ今回は進められたのか? その背景には「デザイナーとしてエンジニアリングを理解する」ことが大きく関わっていました。

エンジニアリングを知ると、施策の費用対効果を見積もれる

プロダクト開発における、費用対効果の重要性

プロダクト開発において、施策の優先順位や意思決定は、費用対効果で判断されることが多いです。

事業や会社にとって、プロダクト開発にかかる時間全てがコストであり、プロダクトオーナーをはじめとした開発に関わる全ての人が、そのコストを常に気にしています。

実装コストは、その代表例です。
つまり、僕たちデザイナーは「そのデザインは、コストをかけてまで実装すべきか?」を、常に問われています。
裏を返せば、そのコストに見合うデザインだと費用対効果の観点で示せれば、ステークホルダーとの合意形成は格段にやりやすくなります。

僕自身も、デザインやアイデアを考えるときに「実装コスト」を常に意識しています。
例えば「このデザインを実装すると、どのくらい時間がかかるのか」「コードの複雑性が増して、負の遺産にならないか」などです。

しかしデザイナーの場合、作っているデザインや機能が、どれくらいのコストで実装されるのかイメージしづらく、日頃からデザインの費用対効果を意識するのは難しいことが多いです。

そこで、デザイナーがエンジニアリングの知見を持つことで、実装作業がイメージしやすくなり、費用対効果の観点から施策の合意形成が可能になりました。
次章では先ほど紹介したレビューの向上施策で、どのように施策の費用対効果を明確にしたか、をお伝えします。

コミュニケーションによって、コストを明確に

最初に「この施策の実装コストはどのくらいかかるか」をエンジニアに質問しました。
返ってきた答えは「バックエンド処理の実装に少し工数がかかる」というもの。

しかし、自分の実装経験から、「今回の施策はバックエンドの処理がなくても実現できるのでは?」と思い、実装方法を提案してみました。

すると、少ない工数での実装が可能なことがわかりました。

他事業部と連携して、施策効果の確からしさを明確に

さらに、同様の施策が他事業部でも行われ、レビュー評価が劇的に改善したこともわかり、この施策の確からしさを高める情報も得られました。

費用対効果の提示による、スムーズな合意形成

結果として、少ない実装コストで、大きなリターンを得られる費用対効果の良い施策だと説明できるようになり、この費用対効果をエビデンスとして、プロダクトオーナーに施策の提案をしました。

初回の提案においてプロダクトオーナーは、レビューを上げてもビジネス上の重要指標に影響が少ないと考えており、優先順位を下げていましたが、実装コストが低いならと実装を進める合意を得られました。

デザイナーの僕がエンジニアリングを学ぶ理由

デザイナーの僕がエンジニアリングの知見を持っていたことで、実装コストを減らす提案や、費用対効果の観点からプロダクトオーナーと議論でき、主体的に施策を推し進められました。

しかし、デザイナーがエンジニアリングを学ぶ価値はこれだけに留まらないと考えます。

2020年12月にリニューアルしたアプリでは、プロダクト品質の向上や開発工数の削減や、計測基盤の構築でも貢献できました。
具体的には、簡単な画面の実装やブラッシュアップは僕が対応してUIの品質を向上しつつ開発工数を削減したり、数値計測の仕組みを設計し実装しました。

デザインエンジニアリングによって、事業の不確実性を減らせる存在に

さらに2021年前半の目標を「デザインエンジニアリングによって、事業の不確実性を減らす」ことに設定しました。

デザインとエンジニアリングを越境することで、デザインアイデアから実装までのスピードが上がれば、「実装プロトタイプ」を作成し、事業における精度の高い仮説検証を高速化することができます。

プロダクト開発において、絶対的な正解は誰にもわかりません。
そんな中でも、精度の高い仮説検証を高速で行うことで、たくさんの失敗の中に成功の兆しが見えてくるでしょう。

この兆しの発見によって事業における不確実性を減らし、向かうべき方向を見出すことに貢献することは、大きな価値を生むと考えています。

「決まったものを効率よく作る」を超えて、「作るべきものの方向性を、早く正確に見つけ出す」へ。

デザイナーという職種に留まらず、「事業を推し進める課題解決者」として、プロダクトオーナーや事業部長、さらには経営者とも伴走し、事業貢献できる人材になる。
これが、デザイナーの僕がエンジニアリングを学ぶ理由です。

最後に個人的なことになりますが、僕がエンジニアリングをもっと学びたいと思えるのは、事業貢献やビジネスを抜きにしても、エンジニアリングを学び、手を動かすことが純粋に楽しいからです。

昔から物ごとの仕組みを知ることが好きで、「アプリがどう動いているのか」を知ることが楽しく、時間をかけた実装がうまくいったときの達成感もたまりません。
できることが増えると、もっと高度なことに挑戦したくなるのが、エンジニアリングの魅力です。

なので、自分の手で実装をすること、エンジニアリングに関わることが楽しいなら、その楽しさに任せて学んでいけばよいと思います。

この記事が、エンジニアリングを学ぶべきか迷っている方の背中を押すきっかけになれば嬉しいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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