Visional Designer Blog

プロダクトデザイナーになる前に知っておきたい、現役デザイナーの頭の中  —— 「デザイナーによる課題解決の舞台裏」イベントレポート

こんにちは、新卒デザイナーの採用を担当しています松田です。

今回はデザイナーを目指す学生のみなさまを対象に開催したオンラインイベントの模様を紹介します。

Visionalのような事業会社で働くプロダクトデザイナーは普段どんなことを考えて、どんな働き方をしているか。そんな疑問にお答えするため「デザイナーによる課題解決の舞台裏」と題し、Visionalの新規事業と既存事業を担当するデザイナー2名によるトークイベントを開催いたしました。

コミュニケーションデザイナーによるイベントのレポートは、こちらからご覧ください。

※本記事の情報は、イベント開催時(2021年1月)のものです。

目次

  • 登壇デザイナー紹介
  • チーム体制とスケジュール
  • 事例紹介
  • 普段から意識していること
  • 失敗からの学び
  • 質疑応答

登壇デザイナー紹介

渡部 夏菜 / Kana Watanabe

2015年新卒入社。Visionalの新規事業開発を担うビジョナル・インキュベーション株式会社で「BizHint(ビズヒント)」のデザイン全般を担当。
クラウド活用と生産性向上の専門サイト「BizHint」:https://bizhint.jp/

武 穂波 / Honami Take

2018年新卒入社。「ビズリーチ」求職者向けアプリのプロダクトデザインや、新規プロジェクトのデザインなどを担当し、デザインチームのリーダーも担当。
即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」:https://www.bizreach.jp/

早いサイクルでの検証、スピード重視のリリースを最優先に|チーム体制とスケジュール紹介

人事 松田:
まずは2人が所属するチームの体制と、どんなスケジュールで働いているかを教えてもらえますか。

BizHint 渡部:
わたしが所属するBizHint事業部は、新規事業なので事業部全体で24人。そのうち開発チームは7人で、デザイナーはわたし1人です。

開発、セールス、編集と職種での枠組みはありますが、開発チームのSlackチャンネルにはセールスや編集のメンバーもいますし、逆のパターンもあります。職種の垣根を超えて「BizHint事業部で1つのチーム」という感覚で仕事をしています。

BizHint 渡部 ある1週間のスケジュール

BizHint 渡部:
作業時間の確保を優先するため、ミーティングは必要最低限にしています。「早いサイクルでの検証」「スピード重視のリリース」を優先しているためです。

ミーティングも限られた時間で終えられるよう、事前に目的や議題、デザインを共有して、準備は入念にしていますね。

人数が少ないということもあり、何かあったらミーティングの時間を設けるのではなく「今から相談していいですか」と、その都度声をかけることが多いですね。今はリモートワークなので「ちょっとDiscordで話していいですか?」に変わりました。

ビズリーチ 武:
ビズリーチ事業は全体で500人くらいの組織です。10年以上の歴史がある事業なので、渡部のBizHintと比べると組織の規模が違います。

担当している求職者向けアプリの開発チームは20人弱で、デザイナーは3人います。他に企画が4人、開発が8人、データ分析の担当が2人です。

ただ、アプリチームだけでなく、違うチームや事業部で働くデザイナーともコミュニケーションをとることは多いですね。

ビズリーチ 武 ある1週間のスケジュール

ビズリーチ 武:
プロダクト開発担当やマーケティング担当など、一緒に働くメンバーが多いので、定期的な目線合わせや相談をして、精緻な意思決定ができるスケジュールになっています。メンバーとの1on1もあるので、そういう意味では固定された予定は多いです。もちろん、まとまった作業時間や考える時間が欲しいときは、自分で調整しています。

ミーティングが多くて、開発が遅くなると思うかもしれませんが、2週間で開発サイクルを回して、高速でリリースすることを大切にしています。また「ビズリーチ」はたくさんのユーザーに利用いただいているので、スピードと同じくらい、リスク回避も同じくらい大切です。

ですので、必然的にステークホルダーとのコミュニケーションが大切になってきます。ミーティングを午前中に固めたり、ミーティングのゴールを明確にして、有効に時間を使ってスピーディーな開発サイクルを維持しています。

 

課題解決のために、ユーザーの課題を「正しく」理解する|事例紹介

人事 松田:
同じプロダクトデザイナーでも、毎日のスケジュールはかなり差がありますね。ただ、スピーディーなリリースや改善ができる働き方なのは共通していると思いました。

それでは、事業やユーザーの課題解決に貢献するため、デザイナーとして実際にどんなことをやっているのか。事例とあわせて紹介いただきたいです。

BizHint 渡部:
2つあって、1つが世の中の流れや業界、お客様の動きなど、事業を取り巻く環境全てを俯瞰することと、もう1つが異なる職種を繋ぐような翻訳家になることです。2つとも、意識して実行していることですね。

最初の「事業の周りにある環境全てを俯瞰する」では、お客様やサービスを取り巻く情報を集め、思考を整理して、議論の叩き台を作っています。

お客様が何に困っているか、サービスでお客様の何を解決しようとしているか。1つの情報や事象からではなく、それぞれの因果関係を俯瞰して、ロジカルに議論を進めて判断できるようにしています。

具体的には、お客様のカスマタージャーニーマップを作ったり、ロジックツリーでお客様の困りごとを要素分解して、本当に解決すべき課題を言語化したりします。

BizHint 渡部:
インプットして、考えて、アウトプットしてを繰り返して、少しずつ事業が目指す世界観に近づくため試行錯誤しています。

もう1つは、メンバーをつなぐ翻訳家になることですね。少数といっても、バックグラウンドや職種は違うので、わたしがメンバーの接着剤になれる動きを意識しています。

BizHintのセールスが使うプロダクトのデザインを改善したときの話で、セールスのメンバーから「使いにくい」とフィードバックがあって。なぜ使いにくいと感じたのか、何が使いにくくしているのかを深掘りし、現状と理想のプロダクト構成を図示しました。

BizHint 現状と理想のプロダクト構成

BizHint 渡部:
「使いにくい」とフィードバックをもらったところを、ただ改善するのは簡単です。ただ、それだとセールスが求めていた課題を解決したとは言えませんし、実装するエンジニアも納得感を持って作業できません。

なので、ここが課題で、理想はこうですよねと図にして提案することで、職種や立場が違えど、全員が共通認識と納得感を持って改善を進めることができました。

ビズリーチ 武:
渡部の話とも重なりますが、ユーザーヒアリングや施策アイデアとして、出てきたフワッとした課題に対して「本当の課題は何か?」を考えて、根本的な課題の特定まで考えるようにしています。

もう1つはユーザー視点に立って、仮説検証したり、デザインを考えたりするようにしています。ユーザー視点を担保するのは、デザイナーの役割ですし、わたしたちが最後の砦だと思うので。

事例として、アプリでユーザーがメッセージを返信するときに使うテンプレート機能の改善がうまくいったときのことを紹介します。

これはユーザーが返信するときに感じている物理的負荷と心理的負荷を正しく理解するため、ユーザーヒアリングを元に作成したカスタマージャーニーマップです。このカスタマージャーニーマップを使い、ユーザーの負荷を2種類に分類し、仮説の確度を高めてから改善案の提案を行いました。

参考記事:ユーザーに寄り添い価値を提供 —— アプリのグロースにおけるデザイナーの役割

ビズリーチ 武:
実は別の改善案で1度失敗していて。そのときは「他サービスを参考にする」という手段を目的化した改善案で考えていました。なので、こうしたフレームワークでユーザーの課題を「正しく」理解して、課題を解決する手段を考えるようにしました。

この改善案でメッセージの返信率は改善したので、改めて目的や課題を考えて作るのが大事だなと思いましたね。

チームの合言葉は「最小工数で最大アウトプット」|普段から意識していること

人事 松田:
お話しいただいた事例のような課題発見や施策の提案が、すぐできるようになったわけではないと思います。仕事を進めるうえで、2人はどんなことを意識したり、気をつけたりしていますか。

BizHint 渡部:
新規事業に限らず、どの事業もそうだと思いますが、やるべきことはたくさんあって、だからこそ「効率」や「ムダ」が発生していないかを意識しています。

1つは施策のコストパフォーマンス。施策にかける時間に対して、それ以上の効果が得られるのかは気にしていますね。もう1つは「手戻り」を減らすためのこまめな確認です。

時間をかければいいものができるのは当たり前で。「早い、安い、うまい」がそろった、早く実装できて成果を上げられるコストパフォーマンスの良い施策を考えています。

チームの合言葉で「最小工数で最大アウトプット」というのがあって、「そのデザインで最大の効果は出るの?」みたいなフィードバックをもらうこともあります。

「手戻り」を減らすためにこまめな確認をするのは、スピード感を維持して仕事をするためです。

仕事が「速い」ことは大切だと思いますが、手戻りが多いと意味がなくて。急がば回れで、40%くらいの段階でデザインを共有したりして、手戻りを含めたトータルの作業時間が増えないよう、完成までのこまめな共有を意識しています。

ビズリーチ 武:
効果をあげるデザインをつくるため、事業やビジネスの理解が必要だと思っていて。意識しているのは、得意な人の話をとことん聞きに行くことです。

マーケティング観点や、エンジニアリング観点、ブランド観点という風に、さまざまな観点を踏まえて意思決定をしないといけないので、必要な知識はとても多いです。

1年目の頃から、話したことのないチームや事業部の人にも、空いている時間に1on1をお願いして、話を聞きに行っていました。その人が何を軸に意思決定しているかを学びながら、知識をつけると、サービスをより良くするために必要な視点や知識が分かり、デザインで何をすべきか判断しやすくなりました。

確度を高めるため、信じるべきはユーザーの行動|失敗からの学び

人事 松田:
手戻りを減らすための確認も、得意な人にとことん聞くことも、デザイナーだけで仕事をしているからではなく、他の職種のメンバーと協力しているから芽生える意識だなと思いました。

最後に、これまで失敗やうまくいかないことも経験してきたと思います。2人が失敗から学んだことを紹介してもらえますか。

BizHint 渡部:
1つは「本当に必要な機能なのか」を考えること。もう1つは物事を進めるための伝え方を工夫することです。

「本当に必要な機能なのか」を考えるきっかけを話すと、「こんな機能がほしい」と声が上がって、デザインも実装も時間をかけずにできそうだから、オーダー通りの機能を実装しました。ですが、機能をリリースしても全く使われず、プロダクトにとって負の遺産になりました。

そうなってしまった原因は、「なぜその機能が必要なのか」を深掘りしなかったからだと思っていて。要望を鵜呑みにして、ユーザー課題と向き合わなかったからだと思っています。

もう1つは物事を伝える工夫ですね。

「このデザインは効果があると思ってもらうには、どう伝えるといいのか」「物事を進めるに、相手にどう伝えるといいのか」を意識しています。

『伝え方が9割』という本がありますが、そのタイトルの通りで、大切なのは相手の立場に立って伝えるということなので、これはユーザー視点で考えることと同じだと思いますね。

ビズリーチ 武:
2つあって、1つはユーザーの行動を信じることで、渡部の「本当に必要な機能なのか」を考える話ともつながります。

ユーザーヒアリングで出る「こんなボタンが欲しい」といった意見がリリースに至ったことは1度もありません。というのも、お話を聞いて課題を深掘りしていくと、当初の意見と異なる機能になるからです。

ユーザーの声は、ぼんやりとした主観というか、希望的観測に近いと思っていて。反対に、行動ログや観察から得られるユーザーの行動は主観が入らないので、より本質的な課題に近い情報といえます。ですので、仮説や施策の確度を高めるため、信じるべきはユーザーの行動だと思っています。

もう1つは選択と集中がパフォーマンスを高めるということです。「選択と集中」が大事だと思ったのは、直近の半年でチームのリーダーや、アプリのグロース、新規プロジェクトのデザインと、その他にもいくつか役割を引き受けて、全てが中途半端になりかけたからです。

Visionalのように自由に手をあげて、さまざまな挑戦ができる環境だからこそ、それをやり切る責任があります。会社や事業の優先順位と、自分のやりたいことを接続して、その日のうちにやることとやらないことを決めて、パフォーマンスを上げるようにしています。

議論が進まないときは、まず自分が起爆剤に|質疑応答

当日はイベントに参加いただいた学生のみなさんからも質問をいただきました。その中の一部を紹介します。

Q:
アイデアについて議論していて、議論が進まなくなることはありますか。そんなとき、どうやって議論を前進させるようにしていますか。

BizHint 渡部:
議論が進まないことは、結構あります。そういうときは、まず自分が起爆剤になることを意識していて、少し突拍子もないアイデアを言うようにしています。

アイデアが出にくいときは、参加者にバイアスがかかっていて、真面目なことや綺麗なことを考えがちになるんですよね。なので、自分が突拍子もないことを言って、あえて周りが発言しやすい雰囲気をつくるようにしていますね。

逆にアイデアが発散して、まとまらないときは、目的をちゃんと確認したり「まとまらないなら、わたしが決めます」と自分が決めに行くこともあります。

Q:
プロダクトデザイナーを志望していますが、UI/UXデザイン以外のデザインも挑戦したいとも思っています。希望すれば、自分の担当外のプロジェクトにも携われるのでしょうか。

ビズリーチ 武:
所属する事業部によっては、サービスとユーザーをつなぐランディングページやバナー制作に携わったり、全社をまたいだプロジェクトであれば、所属を問わず関われたりもします。

わたしも半期に1度開催される全社イベントで、映像のディレクションやスライドデザインを経験させていただきました。

どんなチームに所属しても、こんなことがやりたいと周りに言っていれば、ふとした時に任せてもらうことがあるので、常に発信することが大事かなと思います。

おわりに

本質的な課題を解決するため、課題を深掘りし、「正しい」課題発見にも時間を使っていること。早いサイクルでのリリースや改善を大切にしていること。

新規事業と既存事業でプロダクトの歴史や事業規模は違っても、共通した考えを持ってデザインをしていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

Visionalのデザイナーの課題解決に対する取り組みを知っていただくことで、少しでもみなさまのデザインに対する考え方の参考になれば、嬉しく思います。

当日、参加いただいた学生のみなさま、ありがとうございました!

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コミュニケーションデザイナーによるイベントのレポートは、こちらからご覧ください。

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