
デザインの品質を定量化する「コミュニケーションデザイン評価モデル」
株式会社ビズリーチにて、コミュニケーションデザイン部の部長を務めます三井です。 コミュニケーションデザイン部では、デザインの観点を定義し、デザイン品質を定量化する「コミュニケーション評価モデル」を運用しています。今回はコ […]
こんにちは、コミュニケーションデザイン室 マネージャーの槌谷です。「ビズリーチ」の企業向け広告のデザインを制作するチームに所属し、チームのマネジメントも担当しています。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大により大きな変化が起きた年でした。その影響は広告デザインの現場も例外ではありません。
今回は新型コロナウイルス感染拡大によって起きた市場の変化と、変化に対応するための施策。そして、施策から得た学びを紹介します。
今回の記事で紹介すること
わたしのチームではお客様との接点となるリードを獲得するため、オンライン/オフラインを問わずコミュニケーションのデザインを担当しています。
オンラインでは、オンライン広告やランディングページ、オウンドメディアのデザインや、
オフラインでは、エキスポなどの展示会への出展、屋外広告、ダイレクトメールなどのデザインをしています。
これらの施策はデザイナーだけでは行っていません。デザイナーとマーケターが協働し、施策の検討からデザイン制作、効果測定までを一気通貫で実行しています。デザイナーとマーケターが同じ目標に向かえるよう、バディを組む体制をとっています。
このような体制になった詳しい経緯は、古賀の記事をご覧ください。
こうした体制のもと、わたしたちのチームは獲得リード数を目標とし、個人ではそれぞれが担当するチャネルごとのリード獲得数を目標としています。
新型コロナウイルス感染拡大による影響で最も大きかったのは、リード獲得の鈍化です。このペースでは、期初に設定した目標に届かないことが早々にわかり、大きな方向転換が必要になりました。
リード獲得が鈍化した原因は、企業が採用計画を見直したことで、採用に使える予算が減少し、サービスを導入するハードルが高くなってしまったこと。また、対面でお客様とコミュニケーションでき、リード獲得が見込める展示会の中止が相次いだことなどが考えられます。
このような環境下で、リード獲得のためにどんな施策を行ったか。オンライン広告、オーガニック(自然検索流入)、CRM(メールマガジン & ホワイトペーパー) の3つのチャネルの施策を、各担当のデザイナーに代わって紹介します。
オンライン広告では、「ビズリーチ」を利用する意向が高い層をターゲットに設定。ターゲットが抱える課題に合わせた訴求を開発しました。
サービス利用の意向が高い層とは、「人材紹介」や「求人媒体」などの採用に関する一般的なキーワードで検索する層ではなく、「ビズリーチ」のサービス名を含んだキーワードで検索する層です。
マーケターと協力し、ターゲットが抱える採用課題の仮説立てを実施。ここで役に立ったのは、元々セールスを担当していたマーケターの知見と、現場のセールスから上がってくるお客様の声でした。
「ビズリーチを使えば、在宅でも採用できるのか」という声をヒントに、リモートワークでも利用可能なサービスだと伝える内容に変更。バナーやオンライン広告経由のランディングページに訴求内容を反映しました。
訴求内容を変更した結果、オンライン広告のCVRが新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込む以前の数値に戻りました。お客様の課題に合わせた訴求を取り入れたことで、オンライン広告経由のリード獲得鈍化を抑えられました。
オーガニックのチャネルでは、自然検索流入経由のスマートフォンサイトのA/Bテストを強化しました。
新型コロナウイルス感染拡大後、スマートフォンからのアクセスが約15%増加しました。それによって、パソコン用のサイトを中心にしていたA/Bテストを、スマートフォンサイトを中心に実施するよう変更。
A/Bテストはとにかく数を重ねることを大切にしており、デザイナーとマーケターで改善案を出しながら月に10数回のペースで実施しています。
ここで数値が改善した施策を1つ紹介します。スマートフォンサイトの申し込みフォームです。
変更前はラベルとフォームが1カラムのデザインでした。横並びの2カラムのデザインにして、フォームの長さを短縮すれば、入力のハードルが下がるのではと仮説を立てて、A/Bテストを実施。申し込みフォームのCVRは微増でしたが、サイトの直帰率・離脱率は1.5〜5pts改善しました。
お客様の行動がパソコンからスマートフォンに変化したことを察知し、それに合わせてA/Bテストの方針を変更。小さな改善を積み重ねて、各デバイスのユーザー体験を最適化することで、リード獲得につなげていきました。
CVRが落ち込んだ月の翌月には、ギリギリで目標にしていた獲得リード数を達成。小数点第2位レベルの小さな改善もありましたが、1つでも施策が遅れていたら達成できなかったかもしれません。少しでもCVRを上げて、リード獲得につなげようという気持ちだから、達成できたことです。
取り組んだのは、過去に接点を持ったお客様に送付するメールマガジンから、ホワイトペーパーダウンロードまでの動線の改善です。
改善した箇所は大きく2つ。1つは送信するメールマガジンの内容見直し、もう1つはホワイトペーパーのバナーリニューアルです。
在宅勤務による環境の変化や、先の見えない状況にお客様も疲弊していると推測。読むのにエネルギーが必要な画像や情報量の多いメールではなく、お客様一人ひとりに向き合う真摯的で内容を絞ったメールが読んでもらえるのではと仮説を立て、内容は極力シンプルなものにしました。
また、少しでもメールを開封してもらえるよう、メールの件名はかしこまった挨拶ではなく、「4つの転職軸」のような内容を想起させる数字を盛り込みます。
デザインをつくることは一切していませんが、お客様とのコミュニケーションを設計することや「デザインをつくらない」と決めることもデザイナーの仕事だと思います。
バナーを通じてコミュニケーションの時間を短くし、直感的に採用の成功をイメージできるようホワイトペーパーのバナーをリニューアル。具体的には、コピーの一部をビジュアル化し、テキストにはメールと同様に「5年後」や「4つのポイント」などの内容を想起させる数字を使った表現を盛り込みました。
また、バナーには濃い色は使わず、淡い色をなるべく使用しました。メールと同様、お客様の心情を考慮し、刺激の強い色ではなく落ち着いた色を使った方が、見てもらえるのではという考えに基づいてです。
改善の結果、メールマガジン経由のリード獲得は2倍近くの数値を記録しました。
施策を実行するにあたって強く意識していたのは、お客様の心情に寄り添うことです。メールをシンプルにしたことや、強い色味のバナーにしなかったのは、先の見えない不安が世間を覆うなかで、働く環境が目まぐるしく変わるお客様の気持ちを想像してのことでした。
新規リード獲得が難しい状況では、既存のお客様に寄り添い、サービスとお客様の関係を再構築する改善が重要だと感じました。
各チャネルの施策から得た学びは大きくこの3つです。
2020年の緊急事態宣言が発令された期間中は、お客様とサービスをつなぐデザイナーとして、どうしたら世の中の役に立てるかを考え続けていました。
世の中はどんな雰囲気で、お客様は何を必要としているのか。この状況でも「ビズリーチ」がお客様の採用課題を解決できるサービスだと、どうやったら伝えられるか。お客様との最初の接点において、どんなコミュニケーションが最適なのか。
こうした状況で指標となる数値を改善できたのは、デザイナーとして考えたことをマーケターに共有し、一緒に施策を進められたからです。これからも世の中の変化に柔軟に対応し、お客様とサービスをつなげる役割を果たしていきたいと思います。