
デザインの品質を定量化する「コミュニケーションデザイン評価モデル」
株式会社ビズリーチにて、コミュニケーションデザイン部の部長を務めます三井です。 コミュニケーションデザイン部では、デザインの観点を定義し、デザイン品質を定量化する「コミュニケーション評価モデル」を運用しています。今回はコ […]
こんにちは。コミュニケーションデザイン室 クリエイティブセンターの田村です。
コミュニケーションデザイン室では、Visionalの各サービスやコーポレートの広告などを扱っており、わたしが所属するクリエイティブセンターでは、主に新規事業や新規プロジェクトのデザインを担っています。
わたしは過去に、クリエイティブセンターのデザイナーとして、2,000名規模のビジネスカンファレンスのデザインを担当してきました。
今回は、昨年の9月に開催したエンジニア向けのハッカソンイベント「BizReach World Hackathon」の事例をもとに、わたしたちクリエイティブセンターのデザイナーが、イベント設計において、どんな課題を解決しているか。このプロジェクトから2つの課題を取り上げてご紹介します。
「BizReach World Hackathon」は世界中の大学から学生エンジニアを日本に招待し、ハッカソンを通じて、日本で働くことを選択肢の一つとしてもらうことを目的に開催したイベントです。2019年9月26日から29日までの4日間、東京で開催しました。
今回のハッカソンには、13の国・地域から37名の学生エンジニアが参加。優勝賞金1万ドルをかけて、チーム対抗で「エンジニアの能力を可視化するプロダクト開発」をテーマに、アイデアや技術力を競い合いました。
イベント開催にあたり、始めにクリエイティブセンターにきた依頼は、集客用のランディングページ制作のみでした。
わたしたちコミュニケーションデザイン室のデザイナーは、制作に入る前に「クリエイティブブリーフ」を用いて、プロジェクトのステークホルダーからヒアリングをして、制作するデザインの方向性を整理します。
ヒアリングを行うと、複数いるステークホルダーの間でも、イベントのコンセプト、メッセージングが固まっていなかったこと。また、ステークホルダーの役職や所属がエンジニア、人事などバラバラで、それぞれの考えている方向性も定まっていないことが判明しました。
そのため、制作に取りかかる前にステークホルダー全員の認識を揃える必要がありました。そこで、クリエイティブブリーフを埋める前の段階に立ち戻り、わたしたちデザイナーがイベントのコンセプトや参加してほしいターゲットのペルソナ像を整理し、言語化する段階から携わることになりました。
今回は、最終的にステークホルダーのイメージが揃い、コンセプトの合意を得るまで、4度にわたって提案をしました。
提案を重ねる中で「これまでのビズリーチのクリエイティブにはない、もっと自由なデザイン」「エンジニアが集まるイベントなので、テック感のあるものに」など、ステークホルダーからそれぞれの考える方向性を言語化して、引き出しました。それらを提案に反映、徐々に提案の精度を高めていきます。
最終的には、世界中の優秀な学生エンジニアにビズリーチのことを知ってもらい、ハッカソンへの参加申し込みにつなげるランディングページ制作の本来の目的に立ち返り、何を伝えるべきかに向き合いました。
最後の提案では、ランディングページ制作のみだった依頼から提案範囲を大きく広げ、イベントのコンセプト、メッセージング、ペルソナ像、会場の雰囲気、グッズの展開案など。ステークホルダー全員がイベントの大枠をすり合わせられるような構成で提案をしました。
出来上がったランディングページがこちらです。
フィードバックから出た「テック感」のキーワードをベースに、「日本」「世界トップの戦い」「無限の可能性」をコンセプトにしたキービジュアルを作成。「Intelligence & Futuristic(知的かつ未来的)」をイベント全体の制作物のトンマナにしました。
幾何学的な日本の伝統文様に、テック感を加えて、現代的にアレンジ。日本のテックイベントを表現しました。ベースとなる六角形の文様は組み合わせ次第で、様々なものを生み出すプログラミングの無限の可能性を想起させます。
このデザインは、ランディングページだけでなく、ポスターやトロフィー、ネームバッジなどイベントの様々なところで使われました。
ランディングページがリリースされ、イベントの制作に入りました。
しかし、世界規模のハッカソン自体が初めての試みで、何から制作すべきかわからない課題感がチームにありました。
そこで、イベント全体のジャーニーマップを作成することを提案。参加者とイベントのタッチポイントを洗い出し、各ポイントで参加者にどのような気持ちになってほしいか仮説を立てて、制作物を逆算する方法を取りました。
ジャーニーマップを作成したことで、メンバーの視点を個々の制作物へのミクロな視点から、イベント全体へのマクロな視点に広げ、メンバー全員でイベントの全体像を高い解像度ですり合わせました。
イベントの全体像をメンバー全員で共有できたことで、何を制作すべきかの優先順位づけができるようになり、イベントの目的を達成するには、社内のリソースだけでは難しいことが明らかになったのです。その結果、当日のオペレーションを外部に委託するなどの判断もできました。
また、エンディングパーティーやオフィス周辺のミニツアーなど、当初は予定していなかった企画もうまれ、より参加者に寄り添ったイベント設計になりました。
こうして、当日を迎えイベントは無事に期間を終えました。最後に「BizReach World Hackathon」で上げた成果をご紹介します。
初めての開催にも関わらず、54の国・地域から3,528名の応募があり、応募倍率は100倍に。たくさんの応募をいただいたことで、レベルの高い参加者が集まり、国内外のエンジニアに向けたブランディングにつながりました。また、イベント参加者の満足度も高く、日本への就職を決めた参加者もいました。
うれしいことに、制作したランディングページが今年の1月に海外のWebデザインアワード「CSS Design Awards」でSpecial Kudos(特別賞)、および、Best UI Design、Best UX Design、 Best Innovationの4つの賞を受賞しました。
今回、ランディングページの実装を担当した菅野にも話を聞きました。
実装作業は、「テック感」のキーワードや、「世界トップの戦い」などのキービジュアルのコンセプトをもとに、田村とイメージをすり合わせながら、チューニングしました。
オープニングのカラフルなドットは世界各地のトップエンジニアをイメージし、それらを線で結ぶことで、エンジニアたちがトーナメントで競い合う姿を表しています。また、コンテンツ内の見出しアニメーションや、スクロールに合わせた線のアニメーションで、参加者のイベントへの期待感が高まるよう演出しています。
今回のような様々な役職と共同で取り組むプロジェクトでは、ときにプロジェクトの課題解決や目的達成のため、デザイナーの肩書きを越えた動きをすることもあります。このスタンスは今回のプロジェクトに限ったことではありません。
今後も、イベント成功の先にある目的を意識し、デザインの側面に限らず、事業や会社の成長に貢献できたらと思っています。