Visional Designer Blog

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“ビズリーチらしさ”をデザインする – プロダクトデザイン責任者が語る目的思考の重要性

Visional Designでは、創業から10年間のビズリーチにおけるデザインにまつわる取り組みをまとめたブランドブックを作りました。創業期からのクリエイティブをはじめ、Visionalの主要メンバーが考えるデザインについての話や、これからデザインのチカラを活用してVIsionalが目指す未来についてなどが書かれています。

今回はこのブランドブックから、Visionalのすべてのプロダクト開発におけるデザイン責任者であるプロダクトデザイン室 室長 福山憲司のインタビューを紹介します。

※以下の情報は、2019年10月時点のものになります。

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企業には、その企業に勤める社員の間で浸透している考え方や価値観、行動様式がある。いわゆる「企業文化」と呼ばれるものだ。ビズリーチにも創業から10年という歳月の中で、クレドなど明文化されたものの他にも、育まれてきた企業文化が存在している。

その代表的なものが「目的思考」だ。ビジネスサイドだけではなくデザイナーの中にもしっかりと根付いているこの考え方は、どのようにして社内に広がり、文化として醸成されていったのか。そして、目的思考の重要性とは。ビズリーチのデザイナーに目的思考を根付かせたと言われる福山憲司氏に話を聞いた。

プロフィール

福山 憲司/KENJI FUKUYAMA

2013年入社後、「ビズリーチ」のプロダクトとマーケティングのデザインを担当。その後HRMOS採用のプロダクトデザインを兼任。現在は、プロダクトデザイン室長としてプロダクト開発におけるすべてのデザイン責任者を務める。

ビズリーチが生き残っていくためのもの、目的思考

「僕が目的思考を徹底して説いてきたのは、株式会社ビズリーチが生き残っていくためでした。みんなが乗り込んだビズリーチという船が沈まないように……。でも、僕がそうだったというよりも、永田さん(株式会社ビズリーチ 取締役 永田 信)も常々言っていましたし、当時から会社全体が目的思考だったと思います」

福山氏が入社した2013年、ビズリーチはまだ100人ほどの会社だった。91人目の社員として入社した当時のことをこう振り返る。

「あの頃は今ほど明確に職種ごとの役割分担もなく、日常的に発生する大小さまざまな課題をみんなで力を合わせて解決していく、という日々でした。そのため『自分はデザインの専門家だ』という意識は今よりも薄く、エンジニア、セールス、マーケターという肩書きもそれほど大きな意味を持っていませんでした。あらゆる職種の垣根が低く、全員が持っているスキルや経験を重ね合わせてクロスファンクションで一つの船を漕いでいた。そんな感覚でした」

個人が持っているスキルや経験を円として描く。仲間の円は重なり合いながら存在するが、少しずつ得意な領域が異なるため、誰とも重ならない部分がある。福山氏にとってのデザインは、重なりから少しはみ出た部分だったという。

「プロダクトとしてのデザインはもちろんやっていました。でも、僕がどこを見て仕事をしていたかというと、みんなの円が重なり合いながら向かう先にある、ビズリーチというプロダクトでした。常に考えていたのは、ビズリーチがどうなっているのか、どうするべきか、ということ。だから思考の主語が、デザイナーではなく、ましてや僕個人でもなく、ビズリーチだったんです。当時、プロダクトとしてのビズリーチは、イコール会社としてのビズリーチ。プロダクトの成功や失敗が、会社の成長に大きく影響する状況だったんです」

まさにプロダクトは、会社にとっての生命線。その生命線を守るために必要だったのが、目的思考だった。

「会社なので当然利益を出さなくてはならない。それには、プロダクトが提供する機能によってお客様の課題が解決され、その対価をいただく必要があるわけです。そのため、徹底した目的思考による情報設計を行うことこそが、デザイナーとしての大事な使命だと思っています」

小さな成功体験の積み重ねが、やがて文化として根付いていく

福山氏は当時始まったばかりの新卒採用で入社したデザイナーに対して、何度も繰り返し「目的は何か」を問い続けたという。目的思考は、経験による差を埋めるためにも有効な手段であった。

「新卒に限らず誰でも、説明なく仕事を任されても、文脈がわからなければ納得してできません。このタスクはお客様のどんな課題解決に繋がるのか。サービスはこの先、何を目指していくのか。会社は今どういう状態で、自分たちは何のためにやっているのか。そんなことを、ことあるごとに伝えていました」

目的思考で考えていく方が、行動に移しやすい。その結果前進できる。小さな成功体験を通して育っていったデザイナーが、また下の世代に目的思考を伝えていく。その繋がりが社内に少しずつ堆積し、空気を作っていく。福山氏は「文化を作ろうと戦略的にやったわけではない」と言う。しかし、一人ひとりの圧倒的な体験の積み重ねこそが、企業の文化を形成していくと言えるのではないだろうか。

お客様の目的を実現する“対話”を設計する

福山氏は現在、プロダクトデザイン室長として、自社サービスのプロダクト開発におけるすべてのデザインの責任を担っている。情報設計をする際、目的思考はどのように活かされているのだろうか。

「情報設計というのは、基本的にはインタラクションデザインです。言い換えれば、ユーザーとプロダクトとの“対話”をデザインすること。コミュニケーションと言った方がよりわかりやすいかもしれませんね。ユーザーの一つひとつのアクションに対して、プロダクトはどんなリアクションで応えるのか。ユーザーとの間できちんと対話が成立するようなプロダクトを作っていく必要があるんです。

情報設計は、まずは対話の相手であるユーザーペルソナを徹底的に理解することから始まります。彼らはどんな日常業務をして、その中で考えていること、大事にしていることは何か。何に喜びを感じ、何を嫌がるのか。会社から課せられたミッションに、どんな悩みや課題を持っているのか……と、業務内容とユーザーへの理解を深めます。

そして、ユーザーが持つインサイトは何か、潜在ニーズは何かを探っていきます。当たり前のことですが、僕らが関与できるのはプロダクト設計だけで、お客様には直接コンタクトを取れないので、前述のようにユーザーを具体的に想定してプロダクトを作り込んでいくんです」

例えば、ビズリーチやHRMOS採用が対象領域としている、企業の採用活動の場合、採用担当者がやりたいことだけでなく、会社の方向性まで理解できると、対話の設計が変わってくるという。人材採用戦略は、経営戦略や事業戦略と連動して構築される。会社としての大きなミッションの中で、採用のミッションがあり、それに基づいて採用担当者は日々の業務に取り組んでいくことになるからだ。

「採用担当者の方が実現したいと思っていることはさまざまです。仕事の効率を高めたいと思っている方もいれば、より高い成果をあげたいと思っている方もいる。そしてそれは会社を成長させるための行動です。ユーザーが抱える課題を解決するために、我々はどうサポートするのか。それを徹底的に考え抜き、一つひとつの対話を設計していきます。ユーザーの目的を達成するための“下地”や“土台”を作っている感覚に近いと言えばいいでしょうか。なんとなくかっこいいデザインとか、それで『いいね』がもらえるとか、そういった表層的なことに大きな価値はないと思うんです。我々のプロダクトにとって何よりも大事なのは、お客様のビジネスの課題を解決するために機能すること。そして、最終的にお客様の事業成功に繋がることだと思っています」

 “人格”が感じられるようなプロダクトを設計したい

プロダクトがお客様の課題を解決しているか、価値を生み出せているか。それは継続して利用されるかどうかで明らかになる。ある意味で、残酷なほどわかりやすく。

「すべてのお客様が、プロダクトを使ってみて良し悪しを教えてくれるわけではありません。また、ご意見をいただけたとしても、それが本心でない場合もありますし、今はSNSなどで、悪い評判ほど拡散しやすい時代でもあります。もちろん、いただいたご意見に真摯に耳を傾け続ける姿勢をやめることはありませんが、定性意見よりも我々が重視しているのは、日々対価を払って使い続けていただいているという、その事実です。ビジネスの現場で実際に利用していただいていることが、何よりもお客様の課題解決に役立ち、支持されていることの証明だと思います。データを計測し、効率的に利用されているか、使いにくい部分があって課題解決に時間がかかっていないか、なども見ています」

だからこそ、サービスを提供する側が徹底した目的思考で議論を重ね、お客様の課題を解決するためのプロダクトを作っていくことが大事になってくる。さらに福山氏は理想のプロダクトについて言葉を重ねた。

「お客様に心地よく使い続けていただくために、もっと“人格”が感じられるようなプロダクトを設計していきたいです。広告やプロモーションといったコミュニケーションデザインは、ユーザーに与える最初の一瞬の印象が大事ですが、プロダクトはある程度の時間をかけて使うもの。だから、プロダクトから人格が滲み出てくるような対話の設計がとても大切だと思います。仮に、初対面ではあまり印象が良くなかったとしても、付き合っていくうちに使いやすく気持ちがいいな、と思ってもらえたらいい。情報設計は人の服装などの見た目ではなく、振る舞いとか、所作、佇まいのようなもの。『こういう風にボタンを押したら、こういうリアクションがあるからこれは信頼できる』と感じてもらえるような、そういうプロダクトを設計していきたいと思っています」

お客様へのリスペクトを忘れずに

プロダクトでの対話を設計する時には、利用していただくお客様に対するリスペクトが大切だと福山氏は語る。

「ユーザーであるすべてのお客様には、リスペクトの気持ちがないと相手の目的を見誤ります。『この方はこうだろう』なんて、決めつけては絶対にダメなんです。一人ひとりに素晴らしい思いがあって、こういう可能性があるかもしれない、というところまで寄り添って深く想像することができると、対話の設計もより深いものになります。もの作りってそういうものだと思います。自分に好意を持った作り手が、自分のことを深く理解した上で、課題解決のために真剣に考え抜いて設計したものって、やっぱり伝わりますから。自分たちの都合で作ったら、伝わるものも伝わらなくなってしまうと思います」

ビズリーチが生み出すサービスは、すべてインターネットの力を活用したものだ。しかし福山氏は、あくまでもデジタルの向こう側に存在するリアルな人に対するサービスを作っていることを忘れてはならないと言う。

「作っているものはデジタルだけど、リアルな店舗での接客と同じだと思っています。お客様ファーストで、お客様をリスペクトし、お客様の課題を解決するために、ビズリーチのすべてのプロダクトは存在しています。『ビズリーチのデザイナーの文化を作った』なんてことは全く思っていませんが、僕と同じように目的思考で、情熱を持った人たちと一緒に、より大きな課題解決に挑戦していきたいと思っています」

Interview Writer / Editor : White Note Inc. (Seiya Munakata / Minori Fujimura)
Art Director / Designer:Daisuke Endo
Illustrator:Marie S. Y. Park
Photographer:Takuo Sato