Visional Designer Blog

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“広告のその先”を、デザインする – クリエイティブ責任者が語るVisionalのコミュニケーションデザイン

VISIONAL DESIGNでは、創業から10年間のビズリーチにおけるデザインにまつわる取り組みをまとめたブランドブック『BIZREACH × DESIGN』を作りました。創業期からのクリエイティブをはじめ、Visionalの主要メンバーが考えるデザインについての話や、Visionalがデザインのチカラで目指す未来について書かれています。

今回はこのブランドブックから、Visionalにおけるサービスのマーケティングやコーポレートに関わるクリエイティブの責任者であるコミュニケーションデザイン室 室長 三井拓郎のインタビューを紹介します。

記事の終わりには、ブログ未掲載の内容を収録した小冊子配布のお知らせもありますので、ぜひ最後までお読みください。

【2020.3.26 追記】
コロナウイルス感染拡大の影響で、小冊子の申し込みを一時的に停止しております。 誠に申し訳ございませんが、ご了承ください。

※以下の情報は、2019年10月時点のものになります。

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事業会社でありながら、エージェンシー(広告代理店)と同様、あるいはそれ以上にクリエイティブを重視している株式会社ビズリーチ。広告戦略やデザイン戦略を外部まかせにせず、自社内でのクリエイター育成にこだわるビズリーチは、どのような経緯で現在の体制を築いたのか。

事業会社がクリエイティブに注力する意義とは何か。「360°デザイン品質向上」。このスローガンの生みの親であり、クリエイティブの責任者として全社的なデザイン力の向上に取り組んできたのが三井拓郎氏だ。“ビズリーチにクリエイティブを持ち込んだ男”と呼ばれる彼に話を聞いた。

プロフィール

三井 拓郎/TAKURO MII

金沢美術工芸大学卒業後、大手広告制作会社でマス広告の制作を手掛ける。その後、外資系の広告代理店でアートディレクター、事業会社でクリエイティブディレクターとして活躍し、数々の広告賞を受賞。
2014年11月、株式会社ビズリーチに入社後、クリエイティブ部部長に就任。「360°デザイン品質向上」をテーマに掲げ、ビズリーチのクリエイティブ力強化を牽引。現在はコミュニケーションデザイン室の室長として、サービスのマーケティングやコーポレートに関わるクリエイティブの責任者を務めている。

広告だけでブランドはつくれない。気づきから生まれた「360°デザイン品質向上」

「成果を求められるのが事業会社、品質を求められるのが広告代理店。事業会社のクリエイターは成果と品質の両方を求められる点が難しさでもありますが、これこそが事業会社ならではのクリエイティブワークだと思います」

広告制作会社でテレビCMやグラフィック広告の制作を手掛けた後、事業会社でのクリエイティブ責任者を経てビズリーチへ。広告代理店と事業会社どちらも経験してきたからこそ実感するのは、企業が成功する上で欠かせない「ブランド」をつくりあげる難しさだ。

「瞬間風速的なブランドイメージの醸成は広告でも可能でしょう。しかし中長期的にその効果が及ぶものではありません。特に時代の変化のスピードが速く情報が氾濫する現在は、ブランドづくりはますます難しくなってきていると思います。かつて、デザインとは狭義的に色や見た目の表層的な見栄え、装飾と解釈されていましたが、今は違います。プロダクト・広報・マーケティング・ビジネスなど他の要素との掛け合わせで“コミュニケーションをデザインする”必要があるわけです。さらに、社員一人ひとりの立ち居振る舞いまで含めたすべてが積み重なって初めてブランドイメージが確立できる」

ブランディングの鍵となってくるのは、広告だけではなく広告のその向こう側。たとえば「Apple」。プロダクトの質の高さはもとより、広告、店舗、スタッフ、パッケージ、開封したときの高揚感に至るまで、誰もがそこに“「Apple」らしさ”を感じることができる。

「つまり、どこを切っても『金太郎飴』のような状態なわけです。これがブランドをつくるということ。そのためにはデザインが果たす役割がすごく大きいのです。もちろんロジックは欠かせませんが、理屈がわからなくともユーザーに瞬時に働きかける力をデザインはもっています。プロダクトをはじめとして、テレビCMや屋外広告、バナー広告、そして営業資料の一枚に至るまで、ユーザーの目に触れるすべてのコミュニケーションを一気通貫でデザインして、ブランドを確立させていくのは事業会社のデザイナーならではの醍醐味ですね」

まさに、「360°デザイン品質向上」。三井氏が掲げたこのスローガンは、もちろん社内クリエイターに向けたメッセージでもあったが、どちらかというと全社員に向けた啓発の意味が大きかったという。

「デザイナーが制作に携わるものはもちろんですが、たとえば他部署の個々人が作成する資料の色やフォントなど、どんな小さなものでもビズリーチらしさを考えてください、と。その地道な積み重ねがあって初めてビズリーチのブランドイメージをつくるのだと理解してもらいたかったんですよね」

押しつけでは伸びない。「クリエイティブ」が自然発生する環境をつくること

入社は2014年。元々は転職サイト「ビズリーチ」のユーザーだった。「ビズリーチ」で転職活動をしていたところ、三井氏の豊富なクリエイティブ制作の経験がビズリーチの経営層の目に留まりビズリーチに入社することとなり、当時の情報設計室に所属した。

「入社時、ビズリーチのブランドイメージを知りたくて、色々な人に『ビズリーチを車に例えると?』と質問したのですが返答はバラバラ。創業からまだ数年、社内でもブランドが固まっていない状態で、まずブランドイメージをつくっていくのが必要だなと感じましたね。それまでクライアント企業の広告はいくつもつくってきましたが、いずれもブランドカラーがあり、完成されていました。でも、ビズリーチはまだまだ色がついていない状態。ゼロから色をつけていくワクワク感というか、ベンチャー企業ならではの見たことのない未来がつくれるかもしれないという高揚感を覚えています」

やりがいを感じる一方、課題も山積みだった。今でこそ活気のあるビズリーチのクリエイティブチームだが空気はまったく異なっていたという。

「当時のデザイナーはプロダクト等のデザインワークを黙々とこなしているといった具合でした。打ち合わせ等に参加してデザイナーとして意見を求められることも、自分たちから提案することも少ない状況でした。僕はデザインが事業にもたらす影響の大きさとその可能性を経験上知っていたので、デザイナーを組織の中できちんと脚光を浴びる存在にしなくてはと考えていました」

デザイナーたちの自信、そして他部署からの信頼、その両方を獲得することが必須。まずは各業務を通じてデザインの力でクリエイティブの質を徐々に上げていくことに取り組んだ。

「当時の社内はロジック重視でそもそも“クリエイティブ”という概念が希薄でした。だから、他部署に働きかけてデザインの質を上げ、実績をつくることで、デザイナー自身はもちろんのこと、全社員にデザインの力を実感してもらい、デザイナーの存在価値を社内に浸透させていったのです。最初に手掛けたのは、一つのバナー広告でした。企画やデザイン、コピーを吟味し品質を高めたバナーが、飛躍的な成果につながりました。数字を見れば一目瞭然だったので、説得力があったのでしょう。小さな成果を積み重ね、他部署から徐々にプロジェクトに入ってほしいと声がかかるようになり、デザイナー側も仕事の手応えを感じ、積極的な姿勢が生まれていきました」

イベントに掲出するポスター、バナー広告、LP、プロダクトのUI……一つの小さなバナーから始まった仕事が、拡大していった。そうして制作物の質を上げた結果、得られた社内クリエイターとしての自信と他部署からの信頼。1年後、情報設計室は「クリエイティブ部」へと名称を変更した。

社会にビズリーチを知ってもらった、一本のCM

ビズリーチ初のテレビCMは2016年。それまで制作者として何本もテレビ CMを生み出してきた三井氏だったが、事業会社側の立場で制作に臨むと一段も二段も制作の奥深さを感じたという。

「広告代理店との共同作業で、ビズリーチ側のクリエイティブ責任者を務めました。 広告代理店に事業やサービスを本当の意味で理解いただくことは難しく、提案されるCMプランとこちらの意図では、どうしてもズレが生じてしまいます。それを事業会社の人間としてジャッジし、ディレクションしていくのですが、言葉選びがふさわしいか、トーンはどうか、今後の目指す姿にかなっているか。あらゆる角度からプランをチェックしていくと、自分の中で広告制作の意義が一段、二段と深まっていくのがわかりました。制作サイドしか知らなかったときには見えなかった視点でした」

中長期的な視点で、テレビ CMがブランドにどう影響するか。費用対効果はどのくらい望めるか。すでにブランドが確立されている企業の広告制作を担ってきたそれまでの経験とは異なり、真っ白な状態のビズリーチ。何もかもが読めないからこそ考えるしかない。その結果生まれたのが、印象に残っている人も多いであろう、最初のCMだった。

「ビズリーチはハイクラスの即戦力人材の転職をサポートするサービスで、ブランドイメージとしては上質を目指す必要がありますが、最終的に社名を多用するポップで親しみやすい内容になりました。目指すブランドイメージにそぐわない懸念はありましたが、その時点では認知拡大を最優先にしようと社内で合意。未来を見据えたCM制作となりました」

極端な話、格好いいだけのCMや映像はいくらでもつくることができる。ただしその時点の知名度では効果はあるのか。そんな逡巡も事業会社に入ったからこその視点だった。

「初めてのテレビCMですから、反響がまるで予想できず、どんな事態になっても対応できるよう社内でシミュレーションしました。オンエア後、蓋をあけてみると大反響で、アクセス数が驚異的に伸びてまさに嬉しい悲鳴をあげる状態でした。CMをきっかけにそれまで10%未満だった認知度は数年かけて90%台に(※関東での採用業務にかかわる担当者)。限られた業界でしか知られていなかったビズリーチを一気に世間に知ってもらえたことで、問い合わせはもちろん、成約数や登録者数が増え、成果に結びつきました」

クリエイティブによるインパクトと、実質的な成果。事業会社のクリエイターに求められる2つの実績を残せた経験は、チームの大きな自信となった。

全社に広がったクリエイティブの輪。部署を超えて結実させた「キャリトレ」バナー

もう一つターニングポイントとなった出来事がある。「キャリトレ」という若年層の転職者をターゲットにしたクリエイティブリニューアルのプロジェクト。

「ユーザーの心理や背景を分析して広告を制作する王道的な手法でプロジェクトを進めました。ユーザー一人ひとりのペルソナやインサイトを徹底的に分析することで、共感を生む広告を制作していくものですが、ビズリーチとしては初の試み。それぞれの求職者様の適性に応じたおすすめの企業を自動的にレコメンドする機能があったので『人工知能』をキーワードやキービジュアルにするなど、それまでのクリエイティブは“こちら目線”のものが多かったんですね。しかしなかなか共感が得られず成果も芳しくない。より効果的なクリエイティブ制作のためにはユーザーを多角的に分析することが必要。そこでクリエイティブチームだけでなくエンジニアやマーケターなど他部署も巻き込んで、どういう広告が効果的か、各立場からアイデアを持ち寄り、議論を深めていきました」

職種が異なれば視点が違う。各知見を持ち寄ることでユーザーの姿がより立体的に描かれ、理解が深まる貴重な経験だった。ユーザー分析だけではない。キャッチコピーやキービジュアルも、クリエイター以外の社員も考え、アイデアを持ち寄った。その数なんと100以上。「ああでもない、こうでもない」「こういう案はどう?」など遠慮なく議論をかわし、打ち合わせ回数を重ねるごとにアイデアはどんどん研ぎ澄まされていった。

「『“とりあえず3年”の3年が過ぎました』。まるで対象ユーザーがぽろっと心情をつぶやいたような、インサイトを的確にとらえたキャリトレを代表するキャッチコピーが生まれたのもそんな議論の末でした。フロントエンドエンジニアが考えたコピーですが、まさに共同作業の集大成でしたね」

コピーに合わせてビジュアルも制作。部署横断的につくったバナー広告に変えたところ応募率がなんと約2.7倍に。

制作されたキャリトレバナー

「議論に時間をかなり費やしたので遠回りに見えるかもしれませんが、ビズリーチのクリエイティブの大きな転機となりました。このバナーをきっかけにクリエイティブチームのメンバーがより制作を楽しむようになったんです。それに何より大きかったのが、普段制作にかかわらない他部署のメンバーにも、クリエイティブの意義や制作過程の重要性を体験してもらえたことです」

“言葉やデザインを変えるだけでこんなに反応・効果は違うのか”“やはりクリエイティブの力でビズリーチは成長できる”。制作の手応えを共通体験したことで部署を超えてそんな想いが広がっていったという。ビズリーチの社内に、クリエイティブという意識が芽生えた瞬間だった。

ますます大きくなるデザインの役割。クリエイティブでビズリーチをさらに押し上げていく

「デザイナーはビジュアルを整えるだけじゃない、問題解決をする人間だ」。これは事業会社のクリエイターとして制作に取り組み、結果を出してきた三井氏がたどり着いた一つの答え。

「ビズリーチではクリエイターもロジカルシンキングや組織マネジメントをはじめビジネススキルの研修をしっかり受けますし、売り上げの数字などもきちんと見る。成果につながる制作はクリエイターとしての大きな武器となりますし、一個人としても得難い体験です」

もちろん、これからやるべきことも多い。

「ビジネス感覚とクリエイティブ感覚をもっと鍛えなくてはならないし、鍛えればまたそれだけ可能性が広がっていくと思います。先に述べたとおり、デザインには直感で物事を伝える力がある。だからこそ僕たちがもっともっと成長すれば、新しいコミュニケーションデザインを生み出すことにつながり、ひいてはビズリーチの力を底上げできると思います」

ロジックと感性、成果と創造性、ビジネスパーソンとクリエイター……常に相反する視点を縦横無尽に往来でき、両輪で前進できる環境だからこそ、自分たちのデザインが成し遂げられる範囲は広がった。

「ビズリーチでやってきたこと、これからやろうとしていること、全部が新しいチャレンジです。僕は、デザイナーの力やデザインがもつ可能性を信じています。つまり、“デザインで世の中が変わる”ということを純粋に信じているところがあるんですが、ビズリーチというフィールドなら想像もできない未来を実現できるのではないかと考えています」

Interview Writer / Editor : White Note Inc. (Seiya Munakata / Minori Fujimura)
Art Director / Designer:Daisuke Endo
Illustrator:Marie S. Y. Park
Photographer:Takuo Sato

ブランドブックの一部を抜粋した冊子を希望者にお送りします!

今回紹介しましたブランドブックを一部抜粋した2冊の冊子をブログを読んでいただいた皆様に配布いたします。

1冊は、ビジョナル株式会社 取締役 CTO の竹内真が「HRMOS採用のデザイン」について語ったインタビューが。もう1冊には、ビジョナル株式会社 取締役の永田信が「ビズリーチ立ち上げ時のデザイン」について語ったインタビューが掲載されています。

この冊子から、ビズリーチの取り組みを知っていただき、みなさまが「デザインのこれから」を考えるきっかけとなれば幸いです。

【2020.3.26 追記】
コロナウイルス感染拡大の影響で、小冊子の申し込みを一時的に停止しております。 誠に申し訳ございませんが、ご了承ください。

【注意事項】
・2020年5月31日までに申し込みいただいた方に配送いたします。
・数に限りがあるため、先着順になります。
・配送にかかる費用はございません。
・海外への配送は対応いたしかねます。あらかじめご了承ください。

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