
企業の進化に変化をもたらす「融ける“デザインのチカラ”」
“Design is too important to be left to designers.” —— デザインはデザイナーだけに任せるには重要すぎる 「口紅から機関車まで」さまざまなデザインを手がけたレイモンド・ […]
こんにちは。デザイン戦略推進室の戸谷です。
ビズリーチはこの夏、多摩美術大学で「デザイン・マネジメント」の講義を行いました。統合デザイン学科で学ぶ大学2, 3年生を対象にした、プロジェクト実践型の授業です。
「デザイン・マネジメント」をテーマに、いくつかの企業や自治体が講義を受け持つ授業で、ビズリーチは6月から7月の全7回を担当させていただきました。
私は、全7回の講義内容の設計や資料作成、担当講師の社員との連携などを行いました。今回は、この講義の内容や様子をレポートするとともに、「教える」ことを通じて得た学びをお伝えしたいと思います。
今後、こうした取り組みが広がるきっかけになったり、みなさんが何かを教えるときの気づきになれば幸いです。
多摩美術大学 統合デザイン学科は、2014年に設立された新しい学科です。公式サイトには、下記のような「MANIFEST」が掲載されています。一部を引用します。
統合デザイン学科は、従来の領域の区分を取り払い、コミュニケーションやプロダクトに限らず、その他の諸領域を含め横断的に学ぶための新たなデザイン教育の場です。 社会や産業を構成する様々な問題や複雑な要素を生活の営みから感覚的に嗅ぎ分け、それを論理、分析し、視覚化して伝える力と、ものとして具体化し実在化させる能力に長けたデザイナーを育てます。
http://www.tamabi.ac.jp/integrated/
講義では、様々な領域のデザインを横断して学ぶ学生さんに、広い意味でのデザインを扱うキャリアの可能性や、ビジネスとデザインを繋ぐ役割のデザイナーの必要性を、知っていただけらた嬉しいと考えました。どの学生さんも未知の領域への好奇心を発揮し、毎週土曜日の授業にも関わらず熱量高く臨んでくださいました。
今回の講義では、デジタルプロダクトにおけるサービスデザインのプロセスを体験してもらいました。
「就活生の課題を解決するプロダクトをつくる」というテーマで、2, 3年生混合の5人程度のチームを作り、ワークを進めます。いくつかのフレームワークを使って、下記のようにデザインを通じた課題解決を提案してもらいました。
「デザイン・マネジメント」という講義ですが、いきなり経営の課題をデザインで解決する、といっても抽象的でわかりにくいため、まずプロダクトづくりという具体的なテーマで流れを体験していただきました。そして最終的に、そのプロセスがデザイン・マネジメントの対象となるような課題の解決にも応用可能であることを感じていただこう、という趣向です。
ビズリーチのデザイナーは、チームとともに本質的な課題を見つけ、解決することを大切にしています。それは、プロダクト開発やコミュニケーションデザインの現場だけでなく、デザイン戦略の推進においても日々、挑戦していることですし、基本的なプロセスと大きく変わらないと考えています。
講義時間内で、各回の宿題をビズリーチのデザイナーがレビューし、クオリティ向上を行ったり、最初に決めた課題からソリューションがずれていないかのフィードバックを行いました。毎回レビューの時間は、よい緊張感のある真剣な雰囲気でした。
最終的にグループにつき1つずつのプロダクトを提案。発表時には、より具体的にどんな学生のどんな課題を、どうやって解決しようとしているか?を発表してもらい、課題設計から解決策まで、思考プロセスの繋がりを必ず意識してもらうようにしました。
講義の振り返り、生徒のみなさんのアンケートを経て、私が思う一番の反省点は、ワークでより有意義な議論を促せたのではないかということです。そのためには、次のようなことが足りていませんでした。
議論をするときにまず大切にしたいのが、その議論の目的とゴールの把握です。
今回参加してくださった学生さんは、普段の課題でも個人ワークが多く、話し合うこと自体に慣れていない方もいたようでした。議論に慣れないうちは、何について話しているかわからなくなることも、ままあります。みんなの目につくところにその時間のお題やゴールを書いておいたり、議論の前提の共通認識をつくることが大切です。
今回の講義では、宿題のフィードバックに多くの時間を割いており、議論の仕方をガイドする時間が取れませんでした。
フレームワークを使う前に、フレームワークを使う意義や、これからチームで目指すゴールなどの前提を理解しあい、全体像における現在地を意識できる構成にすれば、より有意義な講義になったと感じました。
共通認識をつくったあと、議論のゴールにたどり着くためには導く役割が必要です。
前項と重複しますが、講義のなかでは、グループワークにおける議論の進め方やコツ、ファシリテート、議論を発散したり収束したりするコツについて十分にお伝えできませんでした。結果、各グループのメンバーの特性によって議論の質にムラがでてしまったと感じました。
学生が社会人に対して「貴重なお時間ありがとうございます」なんて言う場面もありますが、学生も忙しいのです。毎週、他の講義の課題もあるなか、タイトなスパンで宿題を出してしまったことも反省のひとつです。また、グループを2, 3年生の混合チームにしたことで、メンバーが集まり話すのが難しくなってしまったというデメリットもありました。
デザイン思考のフレームワークは便利なものですが、どんな手法であれ、どんな目的で、どう使うかによって効果が変わります。学生のみなさんの貴重な時間をより価値あるものにするため、ゴールや目的を意識すること、議論の進め方や、初対面のチームメンバー同士が信頼関係を築くことに、もう少し時間を割くことができればと感じました。
フレームワークや考え方を学ぶことも大切なことですが、デザイン活動の要(かなめ)になるのはコミュニケーションだと、再認識できたことは大きな学びでした。
デザイナーの仕事の多くは他者とのコミュニケーションです。そしてこれは、実際のプロダクト開発をしている私たちにとっても難しいことです。
反省もありましたが、ポジティブな感想も多くいただくことができました。
難しいことを課してしまったり、至らない段取りもありましたが、最後まで諦めずにモチベーション高く最後までやり遂げてくださった学生のみなさんに感謝しています。また、このような機会をくださった先生方も、ありがとうございました。
今後も機会があれば、改善を重ねたうえで、デザインを学ぶみなさんの選択肢と可能性を広げられる取り組みをしていきたいと思います。