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【Design Leadership in Silicon Valley vol.1】Facebook デザインVP × Google UXデザイナーが対談 ー 組織の拡大に必要なこととは?

こんにちは、デザインマネージャーのMoQです。
4月27日、私は『Design & A.I. Report』作者である中国の範凌教授のご招待を受けて、中国杭州で行う若手向けの技術大会「2050大会」に登壇させていただきました。詳しくはこちらをご覧ください。

その「2050大会」で出会ったGoogleのUXデザイナーJason Wang氏(以下、Jason)から、最近彼が出版した『Design Strategies from Silicon Valley』をいただきました。この本に掲載されているデザインリーダーシップについてのデザインVP対談が、学ぶことが多く、本当に素晴らしかったです。Jasonに「この対談を翻訳し、日本のデザイナーに発信させてほしい」とお願いすると、すぐに快諾してくださいました。

Design Strategies from Silicon Valley

今回は、その『Design Strategies from Silicon Valley』の一部を翻訳した内容をお届けしたいと思います。

VP:「Vice President」の略で、組織のトップとして、マネジメントを担う存在。

この記事はDesign Strategies from Silicon Valleyの翻訳転載です。著者の許可を得て配信しています。

Design Strategies from Silicon Valley

この本は、ユーザーエクスペリエンス(以下UX)デザインプロセスにおけるさまざまなデザイン戦略について書かれています。

私たちが普段使っているFacebookのデザインは、UXについて学ぶことがたくさんあると思います。今回私は、デザインのリーダーシップやFacebookのデザインについて、FacebookのデザインVPであるJulie Zhuo氏(以下、Julie)と対談することができました。

Julie Zhuo(vice president of product design at Facebook)
画像引用元:https://mymorningroutine.com/julie-zhuo/

Julieは、約10年前にFacebookのエンジニアインターンとして入社し、現在はデザインVPを勤めています。Julieのブログ「The Year of the Looking Glass」は、私を含む世界中の多くのデザイナーにシェアされ、プロダクト設計について多くの恩恵を受けています。

読者にとって、このインタビューがより興味深いものとなるために、私はオンラインで簡単な調査を行い100以上の質問を集めました。その中から関心の高い質問を選び、メンロパークにあるFacebookの新しいオフィスの「The Looking Glass」という会議室でJulieと会話を交わしました。

Jason:こんにちは、このような幸運な機会をいただけて、とても光栄です。
本日はよろしくお願いします!

Julie:よろしくお願いします!

拡張への挑戦

Jason:Facebookデザインチームの設立当初のことをお聞かせください。Facebookのデザインチームは、Julieさんがインターンとして入社した10年前よりもはるかに大きくなっているにもかかわらず、世界で最も優秀なデザインチームの1つだと思っています。会社規模が拡張し続けるのに合わせて、Facebookはどのようにデザイン組織を構築してきたのでしょうか?

Julie:初期のデザインチームは10人しかおらず、全員が異なる役割を果たす必要があったため、非常にカオスでしたね。 このフェーズにおいては「万能」の人が必要なため、ある課題に対して深く追求するドメインエキスパートと呼ばれる人の必要な人数は限られていました。

しかし、時間が経ちチームが拡大するにつれて、私たちはドメインエキスパートを増やし始めました。そうすることによって、広範囲の問題を解決することに加えて深く追求しなければならない課題も解決することができるようになりました。

今、私たちは世界最高レベルのビジュアルデザインやアイコンデザインの専門家を雇っていますが、10人規模のスタートアップだった当時は、フルタイムのアイコンデザイナーを雇う必要はありませんでした。

現在Facebookのデザインチームには、システムアーキテクチャ、インタラクションデザイン、ビジュアルデザイン、戦略デザイン、その他さまざまな分野でデザインの専門家がいます。そして、設計チーム全体がこれらのさまざまなドメインエキスパートから恩恵を受けています。

しかし、まだジェネラリストを探しています。 私は、「全員がプロダクト設計者であるべき」だと思っています。すべてのプロダクト設計チームメンバーが「多くの人に価値を提供できるプロダクトになっているか?」という観点でプロダクトを構築しています。さらに、組織の水準を大きく底上げしてくれるようなスペシャリストも求めています。

さらに、Facebookの開発プロセス全体を通して私たちが学んだことの1つは、全体像を維持しながら従業員が協力できる「スケーラブルな組織」を構築する方法です。

もしあなたのチームが3〜4人しかいないとき、全員がプロダクトの全体像やビジョンを理解し、自分が何に貢献できているのかを理解することは難しくありません。しかし、何百人もの規模になったときは、これが難しくなります。スケーラブルな組織になるためには、全員がプロダクトの全体像やビジョンを理解し、自分が何に貢献しているのかを実感できることがとても大切です。

Jason:組織が拡大し続ける中で、Julieさんは何を保とうとしていますか?

デザインチームが何百人もの規模になった今も、Facebookはまだ「速く動き、物事を壊す」文化は変わっていないと感じています。

Julie:最も重要なことの1つは、チームメンバーが自分の分野でオーナーシップを持っていることです。オーナーシップは使命感から始まります。

あなたがある課題を抱えていて、それを解決したいと考えたとしましょう。先ほどの例と同様、それが3〜4人の小さなチームであれば、当然のことながらそれを放置すると事業が前に進まない環境なので、それを解決するためにあらゆる力を尽くすことが強いられます。

しかし、より大きなチームになると、オフィスには自分以外のメンバーがたくさんいるので、自分ではない誰かが問題を解決するだろうと考えます。全員がプロダクトの隅々まで責任感を持っていると考えるのは難しいです。

組織が大きくなっても、オーナーシップを持って、プロダクトを良くするために全員が積極的に取り組む必要があります。例えばドキュメントを書くことは、PMだけの仕事ではないですし、目的から逆算して、必要ならば先回りのコミュニケーションをしてカウンターパートに働きかける能力が必要です。

誰もが全力を注いで仕事をする必要があると私は思っています。そうすることが、良い結果に繋がるからです。

Jason:チームがどのように拡大し、それぞれがオーナーシップをもって結集しているのかがよくわかりました。

Julie:もしあなたが、誰かが何をすべきか指示を出してくれるのを待っていたり、他の誰かの仕事であると思うのであれば、あなたはオーナーシップの精神を欠いているので、良い結果には繋がらないと思いますね。

Jason:同意です。 これは組織の成長と、より良いコラボレーションの促進に役立ちますね。

繋がる世界

Jason:Facebookでは、他の企業と差別化を図るためにどのようなことしていますか?もちろんFacebookには才能ある人がたくさんいますが、シリコンバレーにも才能ある人はたくさんいます。Facebookのデザインが他の企業と区別できるユニークな点は何でしょうか?

Julie :Faccbookで本当に大事にしていることの1つは、デザインだけではなく、多くの人々が持っている課題を解決することです。何かをデザインする際に、ユーザーが誰であるかを理解し、彼らの課題を明確にして、解決方法を探せば、より良い結果が得られます。

Facebookのデザイン組織のユニークなところは、私たちがいつも大きな課題を考えていることだと思います。そしてできる限り一般的な視点で考えます。つまり、私たちが解決しようとしている課題は、世界中の何億人が直面する課題です。私たちは、多くの人に影響を与えるデザインを作りたいと思っています。私たちFacebookのミッションは、世界をつなぐことだと信じています。それはFacebook初期の頃も変わらず、マーク・ザッカーバーグさんのミッションは「大学生のためにウェブサイトを構築させること」ではなく、「世界をつなぐこと」でした。

このようなミッションは、世界にとって有益だと思います。私たちは、共有可能なオンラインコミュニケーションのプラットフォームを作ることで、より良い世界を創造できると信じています。それにより、 より多くの人々が繋がり、たくさんの機会を生み出すこと、これが私たちのミッションでありルールです。つまり、課題に取り組むときは、多くの人々に最大の利益を提供することを常に考えています。

Jason:Julieさんは多くの人々をつなぐことについて話しましたが、私は健康を害するスマートフォンの使用状況が問題視されていることが気になります。

Facebookは世界中の人々をつなぐ、素晴らしい仕事をしています。インターネットのサービスを「過剰利用」になることもあって、人々は時々無意識に、様々なアプリケーションを開いています。 インターネットを過剰に利用する人々は、ネガティブな感情を持つことが研究によって示されています。 YouTube、Facebook、Instagramなど、成功を収めている様々なサービスにとって、これは難しい課題だと思います。

どうやってユーザーに有意義な情報や繋がりを提供し、充実した時間を過ごしてもらうのか、Facebookの考えを聞きたいです。

Julie:どんなデザイン課題でもやらなければならないのは、真の課題を理解することです。課題を理解すればするほど、解決策は良くなります。

構築されている各機能についてもっと深く考えてみましょう。例えば、この機能はユーザーに対してどんな価値を提供できるか? コミュニティを作るのはなんのためか? 人同士の良いコミュニケーション体験とは何か?

もちろんこのようなことは非常に曖昧で、対人関係も非常に曖昧です。ですが、これが自分の仕事が好きな理由です。人々のこれらの非常に曖昧な対人関係の課題を解決できるからです。Facebookがデザインしているのは、非常に困難で、複雑な人間関係と社会的慣習なのです。

また、人々の時間の過ごし方をよく理解することは大切です。意図的に設計したものであれば、人々がインターネットで過ごす時間はもっと有意義になると信じています。ユーザーに時間を管理している感覚を持たせ、ユーザーの行動に意向性を持たせれば、ユーザーはより幸せになることができるでしょう。

Jason:確かに。 A.I.によって適切なタイミングや、カスタマイズされたコンテンツを届けることで、リンクやボタンはよりクリックされますし、ユーザーはこのようなカスタマイズされたものに惹かれます。ユーザーがインターネットに依存する前に、利用時間を可視化して意識させることが、まずは重要ですね。

学習し続ける

Jason:話を変えて、多くの読者が興味を持っているキャリアについてお伺いします。JulieさんはFacebookでの勤務歴が長く、そしてキャリアは非常に成功しているように見えます。多くの読者はJulieさんのキャリアアップや、チャンスの見つけ方に興味があると思うのですが、この件について教えていただけますか。

Julie:私が思う、キャリアアップに最も有効なアドバイスは、「もしあなたが上司の立場だったら?」を考えて、あなたが上司であるかのように振舞うことです。

Jason:詳しく説明していただけますか?

Julie:例えば、あなたがキャリアを伸ばしたい、昇進したい、チームをマネジメントしたいと考えるなら、すでにそれらをやっている人を見つけます。 「彼らが何をしているか、私と何か違い、どうすればその人のようにできるか」ということを考えます。多くの昇進するチャンスは、すでに上司のように働いている人にもたらされます。

つまり、「これをやって」と言われるのを待つのではなく、今日から「なりたい人」になったらどのような行動をとるのかを考えて、行動してみてください。

もし私が今、最高経営責任者で、会社全体を統括していた場合はどうでしょう。会社に起こるすべてのことに責任があり、説明責任があるので、全体的な視点から課題を見なければなりません。その立場だったら、と考えると、様々な困難や選択肢に対してより深い理解ができるようになります。

Jason:確かに、キャリアアッププランのいい手段ですね。

Jason:成長の中で重要なのは学習です。Julieさんのブログの中には他の人から学んだことや、読書から得たことなど、学習を続けていることが伺えます。この情報が過剰にある時代にどんな学習に時間を投資するのか、どうやって決めていますか。

Julie:私は、どんな目標を達成したいかで決めると思います。まず3年以内に誰になりたいのかを想像して、自分の理想像を思い描きます。現在と比べて3年後に何が変化するかを書き出してみましょう。周りの人はあなたをどう評価しますか? どんな成績を残していますか?

そして目標から逆算して、今のあなたに足りない部分を見つけます。できていないものは何なのか、この差が分かれば、どんなスキルが必要なのかわかります。そして必要なスキルに投資できます。3年後の理想像は人によって様々なので、共通の答えはありません。

例えば、もしあなたがリーダーになりたいのなら、あなたが必要なのは自信、コミュニケーション、人間関係、影響力になります。もし優秀なデザイナーになりのなら、あなたが憧れるデザイナーは誰なのか、その人のスキルまでたどり着くには何が足りなくて、どんなデザイン知識を理解しなければいけないのか、を考えます、さぁ、今から考えてみましょう。

Jason:そうですね、 Bin BurnettさんとDave Evansさん書いた「Designing Your Life」 という本を思い出しました。その本にはこう書いてあります。「人生をデザインすることとプロダクトをデザインすることはプロセスが同じ、プロダクトの未来像と成果のため、ブレーンストーミングしながら試行錯誤して、色々なパターンを出します。」と。

もしあなたがこれから3年、プロダクトのさらなる成功のために行動するとしたら、どのようなことに取り組みますか。

Julie :私はまずやるのは、希望の成果を達成するために、組織を動かします。自分だけで行動するのではなく、多くの人々のニーズと希望を理解した上で、同じ方向に向かって進むようにします。これは私が積極的に習得しているスキルの1つです。

もう1つは多くの業務と製品の戦略を知ることです。デザイナーが成長し続けるには、戦略の視点を持つべきだと思います。どのように行動を喚起するのか、市場と業界を理解することなど、デザイナーにとってこのようなことに好奇心を持つのは重要なことです。

自分の思考性を訓練する

Jason:Julieさんのブログの中に「偉大なデザイナーはすべてのケースを考慮できて、常に反省する、強烈な思考性を持っています」と書いてありました。

しかし私はこう考えます。人は今行っていることをやり遂げたらたら、次のことに集中することが進化には必要で、すべてのことを常に反省するのは、難しいことではないかと。つまり、反省という行為は人にとって自然ではないと思っています。Julieさんはどうやって反省をしているのですか。

Julie:非常に簡単なのは、振り返る時間を設ける事です。例えば毎週月曜日の朝に30分、金曜日の午後までにどんな事が完了していたら嬉しいかを想像します。さらに、そのためにどのように時間を使い、どう進めるのかを考えるのはいい練習になります。そして、金曜日の午後に1週間を振り返ってみて達成できたのかを確認しましょう。

もしその目標を簡単に達成することができたなら、もっと高い目標を設定します。例えば3件の目標を達成できたのなら、次は5件を目標にします。あるいはもっと難易度が高いことにチャレンジします。

もし1週間の終わりに3件達成できなかった場合は、原因を探しましょう。

原因は集中できていないことでしたか?もしそうなら、集中力を高めることを考えます。重要なことをやる為に専用の時間が必要です。

優先度を見極め、重要な3件を選び、完了できるように努力することが大切です。この練習の目的は仕事のリストを作るではなく、反省です。このような反省は仕事の精度をあげるのに役に立ちます。

Jason:仕事をうまく計画するためのいいアドバイスですね。デザイナーの場合はどうすべきですか?

Julie:私の経験だと、価値のあるデザインを作るには、2つのことが重要だと考えています。

まず1つめは、誰のためにデザインしているのか。 この「誰」が詳しければ詳しいほどいいです。
対象ユーザーはどんな特徴を持っているのか。特にプロジェクトの初期、新プロダクトを開発する際に、対象ユーザーに対する理解は高いければ高いほどいいです。最終的に多くの人々に向けてプロダクトを出しますが、最初から意識しなければならないのは、どんな人を幸せにしたいのかということです。

2つめは、対象ユーザーのためにどんな機能でどんな課題を解決するのかということ。深くユーザーを理解したら、どのように使われるのかユースケースを理解すると、ユーザーの視点からプロダクトのレビューができます。
よくある間違いは、ユーザーの行動、興味、メンタルモデルをはっきり理解していないことです。
そして自分の主観的な視点からデザインを議論します。例えば「これは役に立つとは思わない」あるいは「役に立つと思う」など。

実際、私たちが議論する根拠は、私達の中にそれぞれのメンタルモデル、ユースケースを持っているからです。したがって、この間違いを避けるため、最初から対象ユーザーとユースケースを明確にします。視点を共有してデザインを進めることができ、同じ視点からデザインをレビューをすることができます。そうすると機能するデザインができます。

デザインは人間を理解すること

Jason:確かに、主観的なデザインではなく、客観的な視点が必要ですね。ユースケースを利用して主観の部分を客観にして、明確な基準を作ってからデザイン案の実現可能性を議論するのが大切なのですね。

Facebookには才能があるデザイナーがたくさんいて、彼らは会社に大きく貢献していると思います。しかし多くのデザインチームは、デザインの重要性を唱え、もっと多くのリソースを投下できるように努力しています。この状況をどうやって改善できるかをJulieさんの意見を聞きたいです。

Julie:私にとってデザインとは、人を理解することです。消費者でも、クライアントでも、ユーザーでも、デザインの目的は彼らのニーズを把握して、価値がある解決方法を提供することです。会社の目標も同じで、お客さんに価値があるものを提供しなければなりません。デザイン思考はお客さまのニーズを知ることです。

「デザインの価値を理解できない」と言われる時は、このように返事します。「では、あなたは自分のお客さまが誰か知りたいですか、そのお客さまに価値を提供するためには、どんなことをすべきかを知りたいですか」と。もし、「もちろん、知りたいです。」言ったら、私は「それがデザイン」と伝えます。

デザインはピクセル単位で完璧な絵を描くことではなく、きれいか、きれいでないかはまずおいていて、デザイナーはユーザーを理解しなければなりません。彼らのニーズを理解することで、価値がある体験を提供できると思います。

Jason:ありがとうございます。デザインチームがどうやって価値を生み出すのか、とても重要な考え方だと思います。

Julie:はい、私達デザイナーは人間中心で物事を考え、どんな価値を提供できるかという視点で考えれば、デザインの重要性を伝えやすくなります。

Jason:最後の質問です。Julieさんの視点から優秀なデザインチームと悪いデザインチームの定義ってなんでしょうか?

Julie:いい質問ですね。私が思う良いデザインチームは、価値がある解決策を出せるチームです。このチームの解決策は、人々に価値がある体験を提供できるか? これが、良いか悪いかを判断できる基準だと思います。

Jason:なるほど、すばらしいお話とお時間を、ありがとうごさいました。

Julie:こちらこそ!

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