
デザインの品質を定量化する「コミュニケーションデザイン評価モデル」
株式会社ビズリーチにて、コミュニケーションデザイン部の部長を務めます三井です。 コミュニケーションデザイン部では、デザインの観点を定義し、デザイン品質を定量化する「コミュニケーション評価モデル」を運用しています。今回はコ […]
「キャリトレ」は2022年12月をもってサービス終了しました。
こんにちは。デザイナーの戸谷です。
今回は、挑戦する20代の転職サイト「キャリトレ」で、企業の採用担当者のお悩みを解決するホワイトペーパーを制作した事例をご紹介します。
ビズリーチが運営するキャリトレは、20代の求職者さまが多くご利用くださっているサービスです。ひと言で20代と言っても、働き方やキャリアに対する価値観は千差万別。採用担当者と求職者が直接コミュニケーションできるのがサービスの特徴ですが、採用担当者のなかには、求職者の方がどんなことを考えているのかわからず、お声がけで悩んでしまう方が少なくありませんでした。
そんな悩みを解消する取り組みとして、コミュニケーションデザイナーの浅野が、マーケター、広報とチームを組み「インサイトブック」というホワイトペーパーを制作しました。20代の方の属性をまとめたプロジェクトですが、今回はその制作経緯やチームで制作をした様子、コミュニケーションデザインにおいて心がけたことなどをお伝えできればと思います。
今回の取り組みについて、3人のプロジェクトメンバーが話をしてくれました。
浅野(あさの / 写真右)
コミュニケーションデザイン室 デザイナー。今回の企画の発起人。キャリトレのマーケティングやブランディングに関わるデザインを担当。
野村(のむら / 写真中央)
キャリトレのマーケティング担当。ユーザーの課題と事業部の課題を解決すべく、データに基づいた視点で、プロジェクトを推進。
寛司(ひろし / 写真左)
キャリトレや Human OS「HRMOS」の広報を担当。今回は広報の視点を活かして、インサイトブックに掲載するコンテンツの企画、制作をサポート。
―― 浅野さんは普段、キャリトレのコミュニケーションデザインを担当されていますよね。バナーや広告、LP を作ることが多いと思うのですが、今回はどうしてインサイトブックを作ろうと思ったんですか?
浅野:
インサイトブックは、キャリトレをご利用いただいている採用企業様向けのホワイトペーパーです。
採用担当者の方が20代であっても、求職者が何を考えているのかわからない、みたいなご意見って結構多くて。採用活動をしていただくうえでの参考にしていただければと思って作りました。
内容的には、20代の方のキャリアや転職に対する価値観を研究したプロジェクトですね。
野村:
ある日、浅野さんから、LOCARI さんの『新オトナ女子図鑑 完全版』のお話を聞いて。
マーケティング用語で「F1、F2」のようにターゲットを年齢と性別でざっくりくくる呼び方があるんですけど、生き方や価値観ってそんな単純にまとめられないですよね。そういった課題感から、多様化する「オトナ女子」を「ライフステージ」と「重要視する考え方」を軸に12パターンに細かく研究・分類したものだそうなんです。
それを知った浅野さんから「ビズリーチでも作りたいです!」と言っていただいたんです。
浅野:
私が勉強会でたまたまお話を聞いたんです。野村さんに話したら、野村さんはすぐに LOCARI さんに直接ヒアリングに行ってましたよね。
野村:
そうですね(笑)。
もともと求職者様向けのマーケティング施策を考えていたので、それとあわせて何かかたちにできないかを考え始めました。お話を聞かせていただいたうえで、ただマネをするだけでなく、私たちのサービスならでは課題解決や価値創造に繋がる施策に落とし込んでいきました。
―― なるほど。
野村:
ビズリーチでは以前から、マーケティングの手法として「インサイトハック」を使っていて、事業的にも貢献していたんですね。
―― インサイトハックの説明を簡単にお願いできますか?
浅野:
はい。例えば、キャリトレではサービス開始当初「人工知能がベストな仕事をマッチング」というような機能を押し出すバナー広告を配信してました。でも、自分たちが伝えたいことだけ伝えてもユーザーの心をつかんだメッセージになっていない。一方的なコミュニケーションに終始してしまっているという課題感があったんです。
そこで、ターゲットとなる20代の方にたくさんお会いして、インサイトを探り、コピーを刷新しました。この取り組みのことを、インサイトをハックするという意味で「インサイトハック」と呼んでいます。
野村:
インサイトハックを始めて、俺のことだ、私のことだって共感してもらえるメッセージに変えた結果、登録してくれるユーザーの属性も期待した方向に伸びていったという成功体験がありました。それが今回、ホワイトペーパーのように情報をまとめたものを作るにあたって着想のヒントになったんです。
ユーザーの声をもとに改善した広告。詳しい取り組みはこちらでも紹介しています
―― 今回のインサイトブックは、インサイトハックをより深掘りしたイメージでしょうか。
野村:
そうですね。調査を深掘りして、広告以外にもアウトプットを活用できるようにしたんです。なので、転職に関係ないライフスタイルについての質問項目を入れたりもしました。
寛司:
調査の設計は結構時間かかったよね。
野村:
読む人に興味をもっていただきやすくて、今後別の企画にも展開できるように、寛司さんが広報観点もふまえて設計をしてくださったんです。
浅野:
どんな軸で分けるかっていうのが難しかったんですよね。
―― 現在のかたちにはどうやってたどり着いたんですか?
野村:
結論から言うと、事実ベースの分け方にしたんです。志向や考え方だと、人によって感覚が違うので、わかりにくくなってしまって。20代の転職で事実ベースで分類を作るとしたらどんな軸がありそうかを考えて。
寛司:
キャリトレは、初めて転職をする20代の方が多く使うサービスなので、新卒のときの会社選びが、キャリアの選択における価値観として大きく反映されてるんじゃないかという仮説を考えたんです。
野村:
最後まであらゆるパターンの分析軸を考えて。もう、大変でしたね(笑)。
寛司:
新卒で1社目に選んだ企業選びの軸と、働き始めて転職を考えたときに「どんな企業を選ぶか」を掛け合わせたものを軸にすると決めてからは、ゴールの想像がついて一気に進んだけど、それまでがね。
―― 軸が決まってパターン分けをしていったと思うんですが、気をつけたことはありますか。
寛司:
もともと、決めつけないようにしようという前提はありました。
そもそも、「同じ20代」とくくってしまうと、ユーザーが本当に求めるキャリアにそった採用はできないし、欲しい人材にアプローチすることが難しいということを伝えたくて。
野村:
そうですね。私たちが決めつけるのではなくて、ここから20代のインサイトを読み取ってくださいというスタンスのものにしたかったんです。あくまで、事実を伝えるだけのイメージで。
浅野:
求職者の方を不快にさせてしまったら元も子もないので、あくまで導入としてタイプ分けはしていますけど、最終的には、たくさんの人がいて、それぞれ考えていることが違うっていうことを伝えたかったんです。そこはかなり大事にしました。
寛司:
資料の最後にもそういうメッセージを入れていたのですが、最後まで本文チェックしました。
―― パターンごとのイラストはどんな風に制作したんですか?
野村:
海外のイラストレーターの方にお願いしました。
浅野:
スキルは高い方だったのですが、文字中心のコミュニケーションだったので、ディレクションが難しかったですね。
寛司:
描いていただいたイラストが20代に見えないねっていう話になって。でも、なぜそう見えるのかを言葉にするのは、難しくて。
―― ウエストライン調整してるのとかすごいですね。
浅野さんによる修正依頼の一部
―― このイラスト次第で結構読む人の反応が変わると思うんですけど、どうやって改善していったんですか?
浅野:
おふたりや他のデザイナーに意見をもらったりもしたんですけど。最初はスーツ専門店のサイトを見て、今っぽいスーツの着こなしを研究したりとか。
寛司:
ターゲット企業の新卒採用サイトとかも見たね。どういう人が前面に出て、どういう服装なのかって。
浅野:
そうですね。並べたときに個性が出るようにはしたいと思ってたのと、20代っぽさはやっぱりちゃんと出したかったので‥‥。こうしたいっていう理想のイメージは強くあったので、妥協せずお伝えすることは心掛けました。
イラストレーターさんも意図を汲んでくださり、高いクオリティで修正していただいたので、完成までスピーディでしたね。
ビズリーチは制作のほとんどを内製しているので、外部のクリエイターとご一緒させていただくと違った視点やアイディアが入るのが新鮮で面白かったです。お願いしてよかったです。
―― 浅野さんから見て、おふたりの印象はどうでしたか?
浅野:
私が、こういうことやりたい!って言い出したんですけど、想いだけあっても実現しないと意味がないなって本当に思って。今回、ふたりのおかげで実現できたことが本当に嬉しいし、デザイナーだけでは絶対にできなかったと思ってます。マーケティング視点で ROI の裏付けを説明したり、広報視点で調査の設計をしたり。
モチベーションも私よりも高いくらいのふたりだったので。なんか‥‥前向き?
野村・寛司:
前向き(笑)。
浅野:
寛司さんは、データ見ながら「たのしー!」ってずっと言ってたりとか、野村さんは「大丈夫なんで!任せちゃってください!成功しちゃうんで!」って周りを説得して推進する力がすごくて。
一同:
(笑)
野村:
ホワイトペーパーとしてのデザインやかたちにこだわれたのは、浅野さんが考えてくれたからだと思っています。
浅野:
“読み込む” レポートっていうよりは、眺められるものを目指したんです。企業向けのコンテンツって堅いものが多いけど、カジュアルに楽しく見てほしいっていう想いが最初から3人のなかに共通してあって。
―― 普通のホワイトペーパーにすることは考えたりしなかったんですか?
野村:
一瞬ありましたね(笑)。でも根本に「面白いことをしたい!」っていう想いがありました。
寛司:
何度も諦めそうにはなったけど(笑)。
浅野:
楽しんじゃいましたね(笑)。
野村:
でもやっぱり、ひとりじゃできなかったと僕も思います。
僕が作ろうと思ったら、質問で SNS とかお金の話とか入れなかったし、文言も「ニュアンスじゃない?」で済ませていたかもしれないし、イラストの違いもわからなかった。適材適所のいいチームだったと思います。
―― デザイナーとしてはどうですか?
浅野:
ビズリーチのデザイナーって、ロジカルで目的思考なデザインに強みがあると思っていて。「淡い色で雑誌風のレイアウトなのはなんで?」とかレビュー会で質問されるんです。でも今回は答えられないこともあって。こうしたいからだよ!みたいな。
作り始めたときはそんな感じだったんですけど、考えを進めていくと徐々に意味づけがちゃんとできて、少しずつ棚卸しができました。常に目的や理由が問われる環境なので、ある意味、そのプロセスの意味を考え直すいい機会にはなったと思います。やりたい想いが先行するのも悪くないなって。
野村:
やるべきことから入ったら、違うものができていたかもしれないですね。
コミュニケーションデザイン、広報、マーケティングと、職能を横断したチームで、共通の想いをもって楽しく仕事ができましたし、最初にやりたかったことも実現できました。この先も連携を深めて、コンテンツを広げていきたいですね!