
企業の進化に変化をもたらす「融ける“デザインのチカラ”」
“Design is too important to be left to designers.” —— デザインはデザイナーだけに任せるには重要すぎる 「口紅から機関車まで」さまざまなデザインを手がけたレイモンド・ […]
こんにちは、デザイナーの戸谷です。
ビズリーチでは、不定期に「BizReach Service Design Workshop」(以下、サービスデザインワークショップ)というワークショップイベントを開催しています。丸1日かけて、サービスデザイナーの仕事を体験する内容で、ありがたいことに、毎回ご好評いただいています。参加者の中には、デザイン未経験で参加し、このイベントがきっかけでデザイナーとしてキャリアを歩み始めた学生も。今回は、このイベントの概要や、開催に込めた想い、そして、ご参加いただいた方の声をご紹介します。
サービスデザインワークショップでは、「社会的な課題を解決する」スマートフォンアプリの企画と、UI デザインのペーパープロトタイプを制作します。参加者は、サービスデザインのプロセスを丸1日かけて実践することができます。1日という限られた時間なので、実際にインタビューやコンセプトテストはできませんが、可能な限り、実際にビズリーチで行っているデザインプロセスを体験できる構成にしています。
また、2人にひとりメンターがつくのも大きな特徴です。メンターは普段、事業の UX/UI デザインに携わっている中堅社員が担当し、各デザインプロセスにおいて、現場目線を交えたアドバイスやフィードバックを行いながら伴走します。
ここからは、ワークショップの流れをご説明します。
事前に用意されたユーザーインタビューのサマリーを読み、プロトペルソナを作成、解決すべき課題を抽出します。この段階で価値仮説がきちんと定まっていないと、本質的な課題を設定できなかったり、課題と解決策の接続がイマイチになってしまうため、メンターも交えて真剣に議論を深めていきます。
課題設定ができたら、どんな価値や機能でその課題を解決できそうかを検討します。「パッケージデザイン」と呼ばれるフレームワークを使用し、UVP (Unique Value Proposition) や主要機能のイメージを考え、決めていきます。
次にユーザーストーリーを考え、その流れに沿ったプロトタイプを作成します。はじめに設定したペルソナや仮説との接続を意識しながら作業を進めます。ペーパープロトタイプをアプリに取り込み、遷移などのインタラクションをつけたら完成です。
最後に、参加者全員の前でプレゼンテーションをし、フィードバックをもらいます。
現在開催しているサービスデザインワークショップは、学生を対象に実施しています。
学生の就職活動における一連の流れを考えると、キャリアを選択し、意思決定するまでの間に、さまざまな不安や困難があることがわかります。インターン活動が活発になっている昨今にあっても、世に出て就業した経験が少ないなかで、自身が納得できるファーストキャリアを選択するのは簡単ではないでしょう。面接など、従来の選考におけるコミュニケーションだけでは、イメージできる仕事内容や働き方にも限界があります。
特に、UX デザインやサービスデザインといった仕事は抽象度が高く、仕事内容や、やりがいをわかりやすく伝えることが難しい面もあります。また、メンバーで議論しながらプロジェクトを推進したり、チーム一丸となって新卒を育成するようなビズリーチならではの働き方や空気感も、話に聞くだけでは実感しにくい点です。
こうした学生のニーズ・ペインを考え、課題解決や価値創造といったサービスデザインの難しさと面白さを感じてもらい、就職活動における不安を払拭したいと思いました。そしてその結果として「学生の選択肢と可能性を広げること」を、イベント開催の大きな目的のひとつにしています。
参加する学生のバックグラウンドはさまざまです。このイベントで、はじめて UX/UI デザインにふれ、課題解決や価値創造といったデザイナーの仕事に興味をもってくれた方もたくさんいらっしゃいました。
そしてなかには、「事業会社のデザイナー」をファーストキャリアの選択肢として考えはじめ、ビズリーチを1社目に選んでくれた方もいます。イベントを運営し、強い想いでメンターを務める私たちにとっても、非常に嬉しいできごとです。
今回この記事を書くにあたって、魅力を感じた点や意識に変化があらわれた経緯を、この春新卒入社した社員に聞いてみました。
私はもともと、美術系の大学でインダストリアルデザインを専攻していました。Web の分野には、大学時代から興味があったのですが、どうしたらその業界で働けるのか、実際にどんな仕事をするのか、イメージがわかないままに、就活ではプロダクト系メーカーのインハウスデザイナーの選考を受けていました。
使う人のことを考えてデザインするという意味で、Web のサービスデザインと、それまで学んできたインダストリアルデザインは同じなんだ、とワークショップに参加して感じました。誰のどんな課題を解決するために、どんなものをつくったらいいか、自分の頭で丸1日考え抜けた経験がよかったですね。人のことを想って、モノを創れる仕事に携わりたかったので、この感覚を身をもって知れたことは大きかったです。
思考の過程に共通点があって、これまで学んできたことが活かせるとわかり、未知の業界に挑戦する後押しになりました。本当に、ワークショップを受けてなかったら、この気づきもなく、入社していないと思います。
最後に、新卒採用の担当者から見たワークショップの印象について、話を聞いてみました。
候補者に、「今まで知らなかった自分の可能性」に気づいてもらえることは、採用担当者として感じるメリットのひとつです。
社会やそこにある課題を知らずに学生生活を過ごしてきて、突然就活が始まってしまう。デザイナー職を志望する学生からよく、「就活では “今” 何が作れるか」という、その時点でのスキルを求められることが多いと聞きます。しかし、自分の可能性を知らないままに将来を左右する決断をするのは難しいでしょう。A を知っていて A を選ぶのと、A も B も C も知っていて A を選ぶのでは全然違うと思います。この点で、少なくとも1つの選択肢を見せられるのは、非常に有意義であるなと感じています。
また、本人の大事なファーストキャリアを傷つけないためにも、絶対にミスマッチは起こしたくありません。そのために、仕事の内容や働き方をリアルに伝えられるワークショップのような機会は必要だと考えています。
私自身、何回もメンターとしてイベントに参加してきて、1日の最後に「デザインを仕事にするイメージがわきました」と言ってもらえたことを、とても嬉しく感じていました。今後、広義のデザイナーの重要性はますます高まっていくでしょう。そのなかで私たちは、自分たちの仕事に興味と理解をもってもらえるような取り組みを今後も続けていきたいと考えています。「選択肢と可能性を広げる」イベントとしてアップデートしながら続けていきますので、機会があればぜひご参加ください。