
事業を前に進めるための、具現化のチカラ
この記事は、2023年5月10日に「Assured Tech Blog」にて公開された記事の転載です。 こんにちは、Assured 事業部デザイナーの戸谷です。 事業推進において、プロダクト開発の次の一手をどうするか?を […]
こんにちは、デザイナーのMoQです。
この度、中国の範凌教授とご縁があり、『2018 Design & A.I. Report』の日本語訳版をビズリーチのデザイナー有志で制作させていただきました。
『2018 Design & A.I. Report』は、人工知能(A.I.)とデザインの関係性を示す、とても興味深い研究レポートです。複雑で構造化されていないデータが、ますます増えていくこれからの時代において、A.I.と人間、そしてデザインという行為そのものが、どのような関係性をもって発展していくのか。未来への示唆が詰まったレポートになっています。また、このレポートに掲載されている研究内容は、今年3月に発表された『Design in Tech Report 2018』でも参照されています。
このレポートは単体でご覧いただくよりも、さまざまトピックをまとめたリファレンスとしてご利用いただくと、より一層お楽しみいただけると考えています。研究や事実、証言などをまとめ、そこから導き出される未来や概念について端的にまとめた構成になっているためです。ぜひ、各トピックの引用元を参照してみてください。
今回、このレポートの中国語版(原典)、英語版、日本語版の制作にあたって、執筆者の範先生、MITの学者Sharon氏と私による座談会を行いました。レポートの内容をより多角的に理解できると思いますので、こちらも併せてご覧ください。
本レポートの内容を一部、ご紹介します。
デザインは、1つひとつのクリエイティブ =「もの」でなく、多様な要素が複雑に絡み合う非構造化データ =「こと」である。いまや、単一な因果で理解に到達できる時代から、より複雑な時代になっている。
仕事において、人間が自らの脳を使う作業と、A.I.による処理の比率を「脳機比」という概念で呼ぶ。今回、アップデートされた脳機比 2.0 では、作業者がこのバランスのなかで「A.I.を使う主観的な意志」という側面が追加された。
さまざまな仕事における、脳機比が分析されている。
データ分析やデータサイエンス、プログラミング能力などの分野で、A.I.がデザイン教育にもたらす影響をまとめている。教える立場である教師と、学ぶ立場の学生の捉え方の差も。
デザインが経営の中核に入り、世界的にイノベーションを推進する流れがあるなかで、ビジネスやテクノロジーの劇的な変化に対応していくことは、特に日本のデザイナーにとって大きな課題です。本レポートは、デザイン領域の未来への可能性と警鐘が詰まったものであると感じました。
これからのUXデザイナーは、A.I.と有効なパートナーシップを築き、より本質的で大きなエクスペリエンスをグランドデザインすることになるのでしょう。デザイナーに求められることも「変化・進化」していくのです。
昨年、AlibabaのA.I. “LuBan” が10億ものバナーを作りだし、コンバージョン率を100%向上させたというニュースを耳にしました。「デザインA.I.の急速な進化が、身近な隣国で起きている」という驚くべき事実に、人間によるオペレーションの限界をも感じました。
このレポートは、我々がテクノロジーと社会の変化に対する適応力をもち、A.I.を活用していく未来への示唆と捉えるべきではないでしょうか。脳機比の高い(A.I.が不得手である)人の情動に訴えるストーリーや世界観などのアートを創造するスキルを補い合うことで、デザインの価値をいかに社会に還元できるか。また、A.I.と「競争」するのではなく、「共創」することによって価値を創り出すことが、我々に課せられた使命だと思います。
プロダクト上でのユーザーの体験に共感し、そしてその体験をよりお互いの利益にかなうようデザインしていくことが、目下のプロダクトデザインのホットな領域です。しかし、レポート内で語られる最先端のトレンドでは、その体験を精緻に細分化し、人間性をアルゴリズム化しようと試みており、その先鋭さに驚きました。そして、研究に留まらず、実際にプロダクトを生み出すところまで実現している事実もまた驚きです。
A.Iとデザインの関係性はもはや不可分ではないと強く認識しました。共に未来を作るべき同朋として、ユーザーの課題を理解し、解決していく関係性が、本来私たちが理想とする未来なのかもしれません。
『2018 Design & A.I. Report』を翻訳する機会をいただき、ありがとうございました。日中両国の社会、技術、人工知能、文化、教育など、さまざまな分野の知識に沐浴すること自体が幸せだと感じてます。デザイナーの今後の生き方がどうなるのかを心配するより、もっと広い視点、高い視座を持つことで、Design × A.I.の将来が少しだけ見えてきました。その思考、探求、批判の過程が大事だと感じています。
今回、ビズリーチの翻訳を通じて、関心のある日本の方と一緒に思考、探求、批判の場を作れましたら幸いです。