
企業の進化に変化をもたらす「融ける“デザインのチカラ”」
“Design is too important to be left to designers.” —— デザインはデザイナーだけに任せるには重要すぎる 「口紅から機関車まで」さまざまなデザインを手がけたレイモンド・ […]
こんにちは、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」で、求職者様側のUIデザインを担当している村上です。
ビズリーチのデザイナーチームでは、数人のグループで1冊のテキストを分担し、互いに講義しあう「輪講」というインプット方法を取り入れています。
今回は、輪講の取り組みをご紹介し、少しでもみなさんのインプットの仕組み化に役立つ情報をお伝えできればと思います。
以前、ビズリーチの研修の取り組みをご紹介しました。
次世代のデザイナーを輩出する育成の仕組みは日本でつくれるのか?
なぜデザイナーがコーディングやプログラミングを学ばなければならないのか
数年前のビズリーチデザイナーは若手が多く、新卒研修も現在ほど整っていなかったため、全体的にスキルの底上げをする必要がありました。
そこで、インプットの機会を作り、能動的に勉強できる方法として「輪講」を行うことにしました。さらにビズリーチでは、デザイナーのスキル向上にコミットし、積極的に投資をするという判断から、業務時間内で輪講を行っています。
能動的に学習するアクティブラーニングが注目されている昨今、アメリカ国立訓練研究所(National Training Laboratories)の研究によって明らかにされた理論に「ラーニングピラミッド」というものがあります。
学習定着率を表した図で、能動的になればなるほど学習定着率が上がり、学んだことを他者に教えることがもっとも学習定着率が高いということを表しています。
インプット方法にはさまざまな方法がありますが、輪講はインプットした後に人に教えることでアウトプットに繋げ、能動的に取り組む必要があるため、学習定着率を高めることができます。
輪講の進め方は以下の通りです。
ビズリーチではデザインの前提になる”廃れない知識”と、すぐ使える”具体的手法”のコンビネーションにより、深く理解しながら本質的なデザインを吸収するという点から、『インターフェースデザインの心理学』『インターフェースデザインの実践教室』『マイクロインタラクション』を使用しました。
監修者とはメンバーの理解度をチェックしたり、疑問に答えたりする役割の人で、ビズリーチではベテラン社員が担当しています。グループは5、6人が集まりやすく、最適な人数だと思います。
グループの中からリーダーを一人決め、リーダーは、担当の章や発表順、会議室やカレンダーを抑えます。ビズリーチでは、ディスカッションをすることを考慮し、時間を決めています。
発表者は、講義用にスライドをまとめます。本の内容をそのまままとめるだけではなく、補足情報だったり、理解を深めるための例を盛り込むなどの工夫をします。
当日有意義な時間にするため、グループ全員が担当の章を読んで、ディスカッションしたい内容や疑問、質問をまとめておきます。
輪講では、発表者がその場のファシリテートをしながら講義を行います。「本ではこんな例があったが、業務ではどんな例があるか?」「これはこんなことに活かせそう!」など、メンバーも有意義な時間となるよう積極的に議論をします。
最後の10分は、監修者のフィードバックタイムとしています。監修者はメンバーがきちんと理解ができているかヒアリングをし、必要であれば補足をします。
輪講をやってみて、3つの点で効果を感じています。
以前はメンバー間での概念や用語の理解がバラバラで、専門用語を使うには説明の時間が必要でした。しかし、輪講によって全員が用語に対して共通認識を持つことができ、これまで説明や確認に費やしてきた時間が削減され、効率化に繋がりました。
WEBプロダクトデザインの基礎など、業務を行う上で最低限知っておきたい概念や基礎的なことを共通認識としてもてたことで、ディスカッションの質が上がりました。
発表者は人に説明するために自分の言葉で嚙み砕く必要があり、聴講者は発表者の実例付きの説明により具体的にイメージしながら理解を深めることができます。
また、疑問がある時はチームでディスカッションすることができ、自分の知らない知見をメンバーから聞くことができます。チームでも解が出なかった場合は、監修者に聞くことで解消することができます。
その他にもチームビルディングに役立ったり、プレゼンの練習になるなどの効果もあります。
個人的には、以下の点で業務に活かすことができました。
「人はあらかじめ構築された【メンタルモデル】を持っている」という学びから、新しい機能を作成する際に「メンタルモデル」とずれているのではないか、こうした方が迷わないのではないか、という議論ができました。
さらに、以前はアクションに対するフィードバックを忘れがちでしたが、フィードバックの重要性を理解し、デザイン時にフィードバックまで考慮することを忘れなくなりました。
クリエイティブなところでは、「顔認識専門の脳領域がある」という学びがあり、人間の顔に注目しやすいことから、人の表情が大きくわかるバナーを作成。人間が正面を向いている画像は感情に訴えやすく、別の場所を見ている画像はその目線の先に注目させることができるので、用途に合わせて手法を使い分けることができました。
デザイナーは絶えずインプットをしていく必要があり、1人でのインプットには限界があるなと感じています。
チームでインプットを仕組み化することで、個人的には継続的に学ぶことができますし、チームとしてはインプットが最大化され、結果チームの生産性も上がりました。
さらに、「輪講」というフレームワークを知ったことで、自発的に課題図書を決めて輪講をするメンバーもいます。チームの生産性をあげたい、コミュニケーションコストを最適化したいなどの課題をお持ちの方は、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。