
デザインの品質を定量化する「コミュニケーションデザイン評価モデル」
株式会社ビズリーチにて、コミュニケーションデザイン部の部長を務めます三井です。 コミュニケーションデザイン部では、デザインの観点を定義し、デザイン品質を定量化する「コミュニケーション評価モデル」を運用しています。今回はコ […]
こんにちは、コミュニケーションデザイングループで、ビズリーチのBtoCマーケティングに関わるクリエイティブを担当している岩瀬です。
私たちのチームでは、クリエイティブのクオリティを上げるために、1年ほど前から「クリエイティブブリーフ」を導入しています。今回はそのナレッジをお伝えし、一つでもクリエイティブ制作に役立つ情報をお伝えできればと思います。
私たちのチームでは、マーケターとデザイナーが一緒になって、広告施策を検討をしています。
広告企画を考えるプランナーや、メッセージングを考えるクリエイティブディレクターといった明確な役割分担はせず、どんな訴求をするのか、マーケターと相談をして決めています。
ただ、1年ほど前までは、広告のゴールやターゲットを、メンバーそれぞれの言語・やり方で考えて進めていました。
そのため、制作を担当するデザイナーも「誰に何を伝えるための広告なのか」「どんな訴求が効果的なのか」を迷いながら作っていたため制作時間がかかったり、幅広いターゲットに「なんとなく」伝わる広告で、訴求が弱いものになっていました。
クリエイティブブリーフ導入前のバナー広告
そこで一年ほど前に、「インハウスでも、目的を達成できるクリエイティブを作ってもっと事業に貢献するにはどうしたらいいのか?」、「大手広告代理店が作るようなクオリティの高いものを作るには?」など議論を重ね、メッセージの作り方を書籍などで色々研究しました。その結果、広告代理店などで用いられている「クリエイティブブリーフ」を導入することにしました。
クリエイティブブリーフとは、広告制作などにおいて戦略のベースとなる情報を完結にまとめたものです。
クリエイティブブリーフの項目は色々とありますが、何度も試行錯誤し改善を重ねた結果、現在私たちのチームで用いているのは以下の項目です。
広告の目的 | 広告で達成したいことは何か | |
---|---|---|
ターゲット | 広告を訴求する対象はどのような人物か? | |
ターゲットの行動変容 | 広告に触れる前のターゲットは どのような行動を取っているか? |
広告に触れた後のターゲットは どのような行動を取るか? |
インサイト | ターゲットはキャリアに関してどのような考えを持っているか? | |
プロポジション | ターゲットに対して提供できる自社のメリットは何か? | |
根拠 | 広告訴求の正しさを裏付ける定性、定量情報はあるか? | |
配信先媒体 | Facebook,Google,Yahoo!などどの媒体に広告を配信するか? |
クリエイティブブリーフのテンプレート
ちなみに、項目を決めるにあたり、下記の書籍を参考にしました。
今も、運用しながらブラッシュアップを重ねています。
(参考書籍)
クリエイティブブリーフを作るときは、デザイナーのディレクション担当者と、マーケ担当者の2人で、30分ほどで項目を埋めていきます。
一番難しいのはターゲットインサイトですが、ビズリーチでは定期的にユーザーインタビューを行っているので、その情報を活用したり、なければ新たにユーザーインタビューを行います。
広告の目的 | これまでマーケティングターゲットとしてこなかった女性をターゲットとすることで、パイを広げ、会員、PS受信、成約数の増加を目指す | |
---|---|---|
ターゲット | 高年収のハイクラス層 / 40歳前後 / 既婚(息子が一人) 転職経験1回 / 商社勤務 / 年収1,100万円 | |
ターゲットの行動変容 | やりがい、自己成長の面で不満を感じているが、転職など具体的な アクションは起こしていない。 |
広告で自分のwillに気づき登録。スカウト、応募を通じ、転職するための行動を起こす。 |
インサイト | A:経済的基盤は得たので、40代は他人のために貢献できる仕事をしたい B:年収は下がってもAを満たせる会社に行きたい C:大きすぎる会社は自分の思い通りに仕事ができない |
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プロポジション | 40歳前後の女性の転職成功例 | |
根拠 | ・ユーザーインタビューの結果、40前後のハイクラス女性も willを叶えるための転職を検討しているという事実 ・ビズリーチでもこれまでハイクラス女性が転職成功しているという実績 |
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配信先媒体 | YDN / GDN / FB / Twitter |
項目を埋めた例
クリエイティブブリーフがまとまったら、次は制作を担当するデザイナーに共有し、制作に入ります。
上記のクリエイティブブリーフを活用し制作されたバナー広告
クリエイティブブリーフを導入してみて、クリエイティブを制作する立場において3つの点で効果を感じています。
1つ目は、マーケターと共通認識を持てるようになったことで、アイディアの幅が広がったこと。
導入前は、メディアや配信方法はマーケターにお任せでしたが、そこも把握するようになったことでメディア特性や配信方法を考慮したクリエイティブを考えられるようになりました。
例えばFacebookの、カルーセルで複数の画像を表示できることを利用し、ストーリー性のある広告を配信したり※1、エンジニア向けの媒体ではコピーをテキストエディター風にするなど※2、工夫ができるようになりました。
※1
※2
2つ目は、ターゲットやプロポジションが明確になることで、訴求するメッセージが絞られ、表現の幅が広がったこと。
ぼんやりとしていたターゲット像が明確になることで、どのようなサービスの利点(プロポジション)を伝えるのが効果的か考えやすくなりました。そして、プロポジションを絞ることで、伝え方にも工夫ができるようになり、コピーをひねったり、LP内のコンテンツを増やしたり、表現の幅が広がりました。
3つ目は、制作するものが明確になったことでクリエイティブのクオリティを追求できるようになったこと。
目的、ターゲット、プロポジションなどが明確になることで、デザイナーは制作に集中できるようになりました。その分、クオリティも上がりましたし、迷いながら作ることがなくなったので生産性も上がりました。
私たちが携わるマーケティングは、“売れる仕組みを作ること”で、私たちはクリエイティブを通してそれに寄与することがミッションです。
今の世の中は、モノが簡単に売れるような時代ではなく、製品やサービスが、ユーザーにどんな価値や体験をもたらしてくれるのか、どれだけユーザーのことを理解して生まれてきたものなのかを、きちんとコミュニケーションを通して理解・共感してもらえなければお金を払っていただくことはできない時代だと思います。
だからこそサービスの価値を正しく伝え、ユーザーをより理解し、表面だけでなくコミュニケーション全体をデザインしていくことがより必要です。
今回、クリエイティブブリーフを導入したことで、目的やターゲット、サービスの提供価値
が可視化され、目的を達成するためのクリエイティブを追求できるようになりました。コンバージョンに大きく繋がる、パフォーマンスの良い広告も増えています。
スピード優先だと軽視されがちですが、これからもユーザーにとって価値のある情報を届けるため、コミュニケーション設計の部分に注力していきたいと思っています。